社会科学

六月に鑑賞した作品

ブログに書いた作品のほか、今月は以下の作品を鑑賞した。 6/6 『都市と消費とディズニーの夢 ショッピングモーライゼーションの時代』 速水健朗 6/22 『暇と退屈の倫理学』 國分功一郎 都市と消費とディズニーの夢 ショッピングモーライゼーションの時代 (o…

五月に鑑賞した作品

ブログに書いた作品のほか、今月は以下の作品を鑑賞した。 5/2 レオナルド・ダヴィンチ 美の理想/Bunkamura ザ・ミュージアム 杉本博司 ハダカから被服へ/原美術館 5/6 『ゲーテ詩集』 5/12 『琉球王国』 高良倉吉 5/19 『ニッポン無責任時代』 古沢憲吾ゲ…

九月に鑑賞した作品

ブログに書いた作品のほか、今月は以下の作品を鑑賞した。 9/26 『フランス名詩集』 井上 究一郎 『トーマの心臓』 劇団スタジオライフ 9/30 『氷点』 山本薩夫 『理論劇画 マルクス資本論』 門井 文雄フランス名詩集 (ちくま文庫)作者: ロンサール,デュ・ベ…

七月に鑑賞した作品

ブログに書いた作品のほか、今月は以下の作品を鑑賞した。 7/1 『何日君再来』 7/4 『経営戦略の思考法』 沼上幹 7/6 『ロミオとジュリエット』 グルジア国立バレエ ニーナ・アナニアシヴィリ、アンドレイ・ウヴァーロフ、ワシル・アフメテリ、岩田守弘 7/11…

『明治大正史世相篇』 柳田国男

2009/11/18読了 内容は前半と後半で若干趣が異なっている。 前半は人々の生活に焦点を当て、著者流の「唯物史観」的な考え方、そこから伝統や固有文化の歴史性をあぶりだすようなものとなっている。 個々の話題としては、以下のものが扱われている。 ・市場…

『シンス・イエスタデイ』 F・L・アレン

2009/10/25読了 今年の夏に読んだ『オンリー・イエスタデイ』の続編となる本書だが、前作が大衆の生活の描写に力点を置いていたのに対し、本作は政治・経済などより大枠のものに多くの部分が与えられている。 それは、一九三〇年代のアメリカ生活の中心は明…

『現象学的社会学』 アルフレッド・シュッツ

5年前に読み、引越しの際に実家に送ってしまった本であるが、帰省したのを期に、アンダーラインを引いた部分を中心に再読した。 ゴッフマンの理論的根拠となったシュッツ社会学の要諦をまとめた本書であるが、内容は私たちが「日常世界」に対し、どのような…

『オンリー・イエスタデイ』 F.L.アレン

2009/8/9読了 1920年代記として著名な本書であるが、時代の客観的描写よりはむしろ、その時代の道徳律の変遷に力点が注がれている。そして、この著書からは、繁栄の時代とされる1920年代に通奏低音として流れる、幻滅や諦念や刹那的な感情が感じられる。 人…

『ココス島奇譚』 鶴見良行

2009/5/5読了 旅先のインドネシアで読みました。おそらく氏の著作の中では、最後に読む著書となるでしょう。 インド洋に浮かぶ、ココス島を舞台として、そこで成立していたイギリス人による「王国」や、トラックシステム等による収奪の歴史が描かれます。こ…

『サブカルチャー神話解体』 宮台真司 石原英樹 大塚明子

若者のサブカルチャーを分析したものとして著名な本書ですが、総論よりは次のような個々の事象の分析に、氏の解釈の面白さを覚えました。 たとえば、「私的な場面で、しかし決して「本当の<私>」同士が出会わないような、それでいて持続的なコミュニケーシ…

『パーソンズ 医療社会学の構想』 高城和義

2009/2/22読了 パーソンズの基礎的な理論を説明しながら、その理論をもとに医療社会学の展望を考えていく内容となっています。 理論については「行為理論・役割概念」(51)「逸脱モデル」(70)「パターン変数」(90)「AGIL図式」(137)等、彼の主だった枠組みが…

『アーキテクチャの生態系』 濱野智史

2009/2/14読了 ゼロ年代の日本におけるwebサービスを、「アーキテクチュア」をキーワードとして、生物学的観点から分析した内容となっています。 筆者は、日本でのwebサービスが、同様のシステムをもつアメリカとものと比べ違った利用のされ方をしている、あ…

未来派左翼/アントニオ・ネグリ

近年の時代を象徴する出来事をもとに、ネグリの考え方が述べられていますが、その根幹となるのは「伝統的左翼批判」と「<共>の思想」です。この二つを基盤として、氏の思想が変奏されています。 たとえば、運動に対する氏の考えは次のようになります。 運…

リアリティ・トランジット/吉見俊哉

90年代消費社会の諸様相をめぐる、「リアリティ」の捉え方が著されていますが、この本の主張のひとつはディズニーランドをめぐる次の文章に表れています。 現代日本の都市文化を覆っている「かわいい」ことや「オシャレ」なことへのこだわりは、このような時…

新書アフリカ史/宮本正興、松田素二編

アフリカの古代から近代までの歴史の流れを概観した内容ですが、著者たちの共通認識は次の二つのものが柱となっていると感じます。 アフリカの経済・社会の独自性 西洋中心の歴史観ではとらえずらい特徴が、アフリカの経済・社会にはあり、トピックとしては…

ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る/梅森直之

2008/8/13-8/17 二〇〇五年にアンダーソンが早稲田大学で講義した内容と、著者がアンダーソンの思想を解説した内容が収められている。 講義の部分では、アンダーソンは『想像の共同体』の限界と、現在取り組んでいる思想について語っている。『想像の共同体…

ケータイ小説的/速水健朗

2008/7/27-8/9 ケータイ小説におけるリアル 「ケータイ小説とは、「投稿文化」「UGC」というキーワードを背景にしたコミュニケーションから生まれた作品群である。故に、「ケータイ小説におけるリアル」を、「実際にあった話」かどうかといったレベルで判…

入門経済思想史 世俗の思想家たち/ハイルブローナー

2008/5/21-6/14 アダム・スミスからシュンペーターまでの経済学者の人と思想を紹介している。 それぞれの章を読んで思うことは、経済学者の思想も、その時代の限界の中にあったということ、そしてその中で彼らはそれぞれの時代の問題に解答を与えようとして…

現代に生きるケインズ/伊藤光晴

2008/4/29-5/25 著者はまず、ケインズは自身の思想を「道徳科学」として扱っていることを確認する。ケインズにとって、経済的効率も手段であって目的ではない。彼の中には、経済効率を損なっても望ましい制度を維持したほうがよいという考えもあったのである…

海辺の社会史/鶴見良行

2008/4/29-5/12 ・移動分散型社会 「定着農耕社会で権力の基盤は土地だった。移動分散型社会では、権力の基盤は人間である。どれだけ多くの人間を自分の配下に惹きつけておけるか。それがこの社会の権力の秘密である。定着農耕社会では農民は放っておいても…

日本の歴史をよみなおす/網野善彦

2008/3/9-4/20 ・市場は、そこにはいるとモノも人も世俗の縁から切れてしまう場所、つまり「無縁」の場所となる。別の言い方をすれば、いったん神の世界のものになる。日本の社会では市場は河原、川の中州、浜、坂など境界に立てられる場合が多く、それらは…

マラッカ物語/鶴見良行

2008/2/11-3/15 本書での著者の主張は、歴史学の大国主義史観を改めるべき、というところにある。 著者はその主張を、海賊が国家公認の行為であったこと、西洋が香辛料に注目する前から東南アジアの交易社会は存在したこと、アヘンは中国より先にまず東南ア…

僕の叔父さん 網野善彦/中沢新一

2008/1/21-2/27 著者と網野氏の交流をつづるとともに、全体が網野史学のエッセンスを紹介した内容ともなっている。 『無縁・公界・楽』の主張 著者によれば、この本を出した当時の網野氏の主張は以下のものであった。 人間の本質は自由意志であり、それが言…

方法としての東北/赤坂憲雄

2008/1/25-2/1 著者のひとつの立場として、明治以降の近代化の過程で東北に押し付けられた、「日本のふるさと」「米どころ」といったイメージを解体することがある。その反証として、東北は近代初期までは米どころではなく、主に稗やソバをを作っていたとい…

東南アジアを知る/鶴見良行

2008/1/25-1/27 著者の東南アジア研究の方法論をまとめている。著者独特の方法として「一を聞いて十を知る」「モノから考える」「海の側からみる」といったものがある。印象に残った箇所の一つとして、「辺境」について述べた次の部分がある。 「東南アジア…

バナナと日本人/鶴見良行

2008/1/19-1/23 一商品であるバナナから、フィリピン・ミンダナオ島の農民と日本の流通業者、アメリカの多国籍企業の関係をあぶり出す。 現在のプランテーション経営の起源はダバオ麻農園までさかのぼることができる。その時代に作られた農場経営の制度は戦…

マルクスる?/木暮太一

2007/11/2-11/11 マルクス経済学の概念を平易に解説した本。『価値』『資本』等の概念や、恐慌のメカニズムなど、基本となる枠組みの理解に役立った。 『価値』 『価値』はマルクス経済学の中でも特に基礎となる概念であり、この本の中でも分かりやすく紹介…

『資本論』を読む/伊藤誠

2007/9/17-9/23 114ページで中断 労働価値説 『資本論』全体の基礎となる労働価値説とは、商品の交換価値は、各商品の生産に要する抽象的人間労働(⇔具体的有用労働)の量によって規定される、という学説である。 「『資本論』では、使用価値に対する価値の…

知的複眼思考法/刈谷剛彦

2007/9/2-9/22 批判的読書 「批判的読書の第三のポイントは、著者の論理を丹念に追うことです。論理に飛躍がないかどうか。過度に攻撃的な主張がないか。論理を丹念に追いながら読んでいく。批判的読書の神髄はここにあります。論争が含まれる場合、反対意見…

デュルケム「自殺論」を読む/宮島喬

2007/5/19-5/26 デュルケムは十九世紀後半の自殺増加の要因を、「近代的な自我の危機」としている。 「近代的な自我というものが危機を経験するときには、その危機の経験の仕方は二つあるということです。一つは、自己の内部に孤立化してとじこもるような危…