2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

死霊/埴谷雄高

埴谷氏のインタビューを読んだついでに、『死霊』の一部(ページを折った部分など)を読み返してみました。 改めて読み返すと、「虚体」「自同律の不快」「過誤の宇宙史」「愁いの王」など、インタビューで氏の主張していた部分が、自分でも強く印象に残って…

アビエイター/スコセッシ

映画と飛行機に人生を賭けた実在の人物、ハワード・ヒューズの前半生を描いています。 夢のためには金銭を惜しまない情熱家である一方、極度に神経質なところが見られます。映画の終盤は、彼が病的になっていく様子が描かれていますが、映画に描かれない後半…

村上春樹イエローページ1/加藤典洋

村上春樹の初期の作品を読み解いたものですが、この本の読み方からは、村上氏が常にその時代を見据え、その時代に通底する感性を物語にしていることが分かります。 『風の歌を聴け』では、「金持ちなんて・みんな・糞くらえさ。」という世の中に対する否定的…

新書アフリカ史/宮本正興、松田素二編

アフリカの古代から近代までの歴史の流れを概観した内容ですが、著者たちの共通認識は次の二つのものが柱となっていると感じます。 アフリカの経済・社会の独自性 西洋中心の歴史観ではとらえずらい特徴が、アフリカの経済・社会にはあり、トピックとしては…

善き人のためのソナタ/フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク

ベルリンの壁崩壊前、84年の東ドイツの秘密警察“シュタージ”の内幕を、監視対象者の物語と織り交ぜて描いています。 元シュタージへのインタビューを4年間重ねて作り上げた作品とのことなので、シュタージの様子はおそらく現実のそれに近いものでしょう。…

埴谷雄高独白「死霊」の世界

ETV特集で放送された埴谷氏のインタビューをまとめた内容となっています。氏の生い立ちや、家族のこと、活動のことなどが話されますが、話題の中心は、やはり『死霊』、そしてその中心となる概念である「虚体」「未出現宇宙」です。 これらの概念について…

『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する/亀山郁夫

『カラマーゾフの兄弟』の翻訳者である著者が、刊行された本の内容や周辺の人びとの証言から、物語の続編を空想するという内容となっています。 続編は、第一部の「父殺し」を拡大した「皇帝暗殺」がテーマとなること、その実行犯はアリョーシャではなくコー…