2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧

青い棘/アヒム・フォン・ボリエス

1927年に「シュテークリッツ校の悲劇」と呼ばれた、実在の事件の映画化作品です。 物語の中に出てくる当時の恋愛の方法、自由な部分と様式的な部分とが混在した様子が面白く感じられました。 ただ、「愛した人を裏切ったものを殺し、そして自分も死ぬ」とい…

リアルのゆくえ/大塚英志・東浩紀

2001年から2008年の秋葉原連続殺傷事件を受けてまでの二人の対談がつづられています。 社会を扱った箇所では、東氏の「社会の工学化」が話題の中心となっており、『情報社会論』や『自由を考える』と共通する主張が述べられています。 いっぽう、人文科学的…

ベルリン、僕らの革命/ハンス・ワインガルトナー

2008/10/24 「ロスジェネ」の若者たちを描いた、ドイツ側からの回答という印象を受けた。 ストーリーは、社会運動を行う若者たちが大会社の重役を誘拐する。重役はかつての革命の闘志であり、若者たちの行動を非難しながらも、思想には共感する。それに三人…

須賀敦子全集 第2巻

2008/9/21-10/19 『ヴェネツィアの宿』と『エッセイ/1957〜1992』の一部を読む。 『ヴェネツィアの宿』では筆者の留学時代の話や少女時代のエピソードを、父親に対する思いと絡めながら追想する。当時のイタリアやフランスの人びとの生活や、留学生たちの様…

月下の一群/堀口大學

325ページまで読む。 一九世紀末から二〇世紀初頭までの、フランス詩の訳詩集。 木や人形、あるいは焼きたてのパンのようなものまで、なにかの象徴であるかのように表現する詩が多い。 また、春の訪れや恋人の前での一瞬に、予感のようなものを見いだす詩も…

甘い泥/ドュロー・シャウル

2008/10/15-17 七〇年代のイスラエルの地域共同体「キブツ」の生活と矛盾を描く。 平等や相互補助がたてまえとなっている共同体の生活の中に、内部からは差別、外部からは外国人やセクシャルなものが生々しくしみ込んでくる。 赤ん坊を共同体で育てるため、…

やかまし村の子どもたち/ラッセ・ハルストレム

2008/10/12-13 先日見た、『ラスムスくんの幸せをさがして』と同じ原作者の児童文学の映画化。美しい自然と、その中で暮らす6人の子供たち。彼らは何でも知りたがったり、歌を歌いながら買い物に出かけたり、と絵に描いたように理想的な村が描かれる。見始…

殺人に関する短いフィルム/クシシュトフ・キェシロフスキ

2008/10/13 前半は、弁護士の善意・清廉さと、ゴロツキの少年やタクシードライバーのむき出しの悪意が、交互に描かれる。 後半は、ドライバーを殺した少年の裁判の様子が描かれるが、彼の悪意のウラにあるものが、弁護士との会話の中で明らかになっていく。

南へ向かう女たち/ローラン・カンテ

2008/10/7-10/10 70年代に、カリブ海のハイチに、現地の黒人男性とつかの間の恋愛を楽しみいく、中年の白人女性たちの生態を描く。また、彼女たちのバカンスの背景に、当時のハイチの政治的状況、強者による弱者の生活への介入の様子などが語られる。 この…

存在の耐えられない軽さ/クンデラ

2008/9/9-10/5 小説論としての小説 「人間生活は楽譜のように構成されている。人間は美の感覚に先導されて偶発的な出来事(ベートーベンの音楽、駅での死)をモチーフに変えるのであり、このモチーフがのちに人生という楽譜に書きこまれることになる。人間は…

キャラクターズ/東浩紀 桜坂洋

2008/9/16-10/2 小説の形をとっているが、その中で作者たちの虚構や小説に関する考えが述べられている。 ・世の中は変化しているように見えるが、そのシステムは案外強固で、たとえば若い作家たちは「変化しない世の中」に照準を合わせて賞を得ている。ある…