2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

秋のにおいとノスタルジア

今日の朝、外に出た瞬間、昨日までとはちがう肌寒い空気のなかに、秋のにおいを感じた。今年初めて感じる秋のにおいだった。このような日は同じにおいに包まれていた過去の記憶が、突然再生される。 あの日の夜、高層ホテルの最上階のレストランで彼女を見か…

桜桃の味/アッバス・キアロスタミ

2007/9/27 主人公のバディは、人生に絶望し自殺願望を持つに至っている。彼は自殺の協力者を求め、車に乗りさまよい続けている。車の同乗者に手を貸すよう頼むが、一人目のクルド人兵士は人を殺すことの恐怖から、二人目のアフガニスタン人の青年はイスラム…

ロバと王女/ジャック・ドゥミ

2007/9/25 シャルル・ペローの童話を元にした作品。実の父である王から求婚された少女の顛末を描く。 監督は『シェルブールの雨傘』のジャック・ドゥミだが、青・赤・パステルの鮮やかな色使いや、幸福感を感じる音楽の使い方はこの作品でも生きている。とく…

『資本論』を読む/伊藤誠

2007/9/17-9/23 114ページで中断 労働価値説 『資本論』全体の基礎となる労働価値説とは、商品の交換価値は、各商品の生産に要する抽象的人間労働(⇔具体的有用労働)の量によって規定される、という学説である。 「『資本論』では、使用価値に対する価値の…

ネーションと美学/柄谷行人

2007/9/2-9/23 超自我の強化としてのワイマール体制 「ワイマール体制は、前期フロイト的な観点から見れば、連合軍=戦勝国たちが、敗戦国ドイツに課した抑圧を内面化した装置だということになるだろう。ドイツ民族を去勢したのは連合軍であり、その背後にユ…

知的複眼思考法/刈谷剛彦

2007/9/2-9/22 批判的読書 「批判的読書の第三のポイントは、著者の論理を丹念に追うことです。論理に飛躍がないかどうか。過度に攻撃的な主張がないか。論理を丹念に追いながら読んでいく。批判的読書の神髄はここにあります。論争が含まれる場合、反対意見…

アニー・ホール/ウディ・アレン

2007/9/21(再見) アレン扮するアルビーと、恋人アニーとの日常と別れを描いた作品。 劇中でいきなり観客に語りかけるシーンや、二人の会話の最中にお互いが考えていることを字幕で流すシーンなど、今でも斬新さを感じる演出方法がある。 面白いのは、作品…

マンハッタン/ウディ・アレン

2007/9/16 アレン扮する主人公のアイザックはTVライターから小説家に転向しようと思案中。そんな中、妻のジルが彼との生活を暴露しようと本を出版する。この危機にある夫婦に加えて、彼の浮気相手の高校生・トレーシーや大学教授夫妻が絡む人間模様が、ニ…

冬の光/ベルイマン

2007/9/9 北欧の小さな町で牧師をしている主人公は、ある夫婦から相談を持ちかけられる。夫がふさぎこんでいる、という相談に、牧師はいい加減な気持ちで慰めるが、そのことを後悔している間に夫は自殺してしまう。 舞台背景となる冬の寂しい漁村の風景や、…

90年代の都市論

以前日記で『攻殻機動隊』のことを書いたが、この映画の特徴として舞台背景となる「都市」が詳細な描写がある。そして、この描写で私はウォン・カーウァイ監督の『恋する惑星』や『天使の涙』を思い出した。どちらも現代のアジア的大都市が描かれているが、…

プルーストを読む/鈴木道彦

2007/7/24-9/4(再読) 想像力・知覚・幻滅 「バルベックは、荒れ狂う嵐と、霧と、ノルマンディ式ゴシック建築の教会だけから出来ているわけではない。またその教会にしても、「ノルマンディ式ゴシック」というだけでは、具体的なものは何一つ分からない。し…