2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

秒速5センチメートル/新海誠

2008/6/29 三篇の短編映画から構成されているが、第一話・第二話と第三話では受ける印象が大きく違う。 一話・二話では、物語がふたりの関係に限りなく集約され、外部の社会はほぼ無視されている。地方の美しい風景を背景とした綺麗な物語は、過去の記憶をフ…

書きあぐねている人のための小説入門/保坂和志

2008/6/22-6/28 著者の小説に対する考えかた、特に著者の小説を読むにあたってポイントとなるであろうことが書いてある。大塚英志氏の『物語の体操』も同時に読んでいたが、二人の創作に関する考え方の違いが比較でき、興味深かった。 「(哲学、科学、小説…

愛の昼下がり/エリック・ロメール

2008/6/27 主人公フレデリックは、美人の妻と子供に恵まれながら、結婚以来妻以外のあらゆる女性が魅力的に見えてしまう。そんな中、旧友のクロエと出会い恋仲になる。しかし、一線を超える手前で彼は思いとどまり、妻の元へと帰ってゆく。 クロエとの会話の…

時の廃墟/沢木耕太郎

2008/5/29-6/17 一九七〇年台〜八〇年代の日本において、時代を象徴する人々、あるいは時代の影の側にいながらも、その時代の特性を体現している人々を描く。 その取材の報告も興味深かったのだが、感銘深かったのはあとがきの次の文章である。あとがきの中…

世界は「使われなかった人生」であふれてる/沢木耕太郎

2008/6/1-6/16 著者が「一映画ファン」として書いたエッセイを収めているが、紀行文家としての著者の思いは、やはりあとがきの次の文章に見られる。 旅をすると、思いがけない経験や情景に触れることで、その国の何かがわかったような気になってしまうが、彼…

入門経済思想史 世俗の思想家たち/ハイルブローナー

2008/5/21-6/14 アダム・スミスからシュンペーターまでの経済学者の人と思想を紹介している。 それぞれの章を読んで思うことは、経済学者の思想も、その時代の限界の中にあったということ、そしてその中で彼らはそれぞれの時代の問題に解答を与えようとして…

ライトノベル「超」入門/新城カズマ

2008/6/10-6/13 数年前のライトノベルのを巡る状況や、その歴史を紹介した内容になっているが、次の“キャラクター”に関する説明が特に面白かった。 ゲーム、あるいはゲーム的な発想で、物語のエンディングが複数になり、登場人物は葛藤も決断もしていない場…

フェリーニのローマ/フェリーニ

2008/6/8 フェリーニ自身がローマに出てきた一九四〇年代と、映画が撮られた一九七〇年当時のローマの様子を描き、いわば現代ローマの今昔物語となっている。市井の人々の生活を撮っている部分もあるが、作品の多くの部分は郊外、寄席、地下鉄の工事現場、娼…

猿の惑星/フランクリン・J・シャフナー

2008/6/3 未知の惑星に到着したと考えていたその星は、実は人類衰退後の地球だったというあまりにも有名な話。 実際に見てみると、シナリオは分かっているもののさまざま場面に面白い描写がある。たとえば「文明的な」人間と「非文明的な」猿の立場を入れ替…

フローラ逍遥/澁澤龍彦

2008/2/29-3/18 二十五の花々について、著者の眼や記憶を通したエッセイがつづられている。 生前公刊された最後の作品であり、著者も自身の死を意識していたのかもしれない。そのせいもあってか、全編がどこか達観したような、乾いた筆致となっている。 妻で…