2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ/『サルガッソーの広い海』ジーン・リース

2009/3/21読了 『灯台へ』 物語は大きく二つに分かれており、前半はある哲学者の一家が灯台行きを計画し、それが頓挫するというエピソード、後半はその十数年後に、成長した家族が晴れて灯台行きを決行するエピソードとなっています。出来事としては単純なも…

『ボーイ・ミーツ・ガール』 レオス・カラックス

2009/3/17鑑賞 「ボーイ・ミーツ・ガール」というポジティヴな印象を受けるタイトルとは裏腹に、主人公のアレックスがパリの街を歩き、街のいたるところで拒絶される思いを味わうような、絶望感の漂う作品。何度も挿入されるガラスの割れるシーンや、レコー…

ルーブル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画/国立西洋美術館

2009/3/20鑑賞 ルーブル美術館所蔵の17世紀絵画を紹介する展覧会となっており、印象残った次の4枚の作品の絵葉書を購入しました。 ≪ド・ブロワ嬢と推定される少女の肖像≫ ピエール・ミニャール 王族の少女を描いた肖像ですが、明るい衣装やかわいらしいポー…

『村上春樹のなかの中国』 藤井省三

2009/3/15読了 村上春樹のなかの中国 第1章では村上作品の中に、中国という国家や中国人、日中関係がどのように影響を及ぼしているかを、『中国行きのスロウボート』『トニー滝谷』『ねじまき鳥クロニクル』『アフターダーク』等の読解をとおして考察する内…

『村上春樹にご用心』 内田樹

2009/3/13読了 村上春樹はなぜ世界性を獲得しえたのか、作中に食事の場面が多いのはなぜか、このような疑問にたいする著者の考えを述べつつ、村上作品の魅力を探っていく内容となっています。 著者の考えをたどると見えてくるものは、村上文学における「暗示…

『インドシナ』 レジス・ヴァルニエ

2009/3/12鑑賞(再鑑) 『トリコロール 青の愛』に続き、以前見た映画を再び見直してみました。9年ぶりの鑑賞です。やはり、9年前に見たときからの印象の違い、また自分が抱く思いの変化を強く感じます。 この映画を始めて観たときは、その前年に訪れたベ…

『写真美術館へようこそ』 飯沢耕太郎

2009/3/5読了 写真の誕生から始まり、各時代の名作をテーマごとに見ていく、という構成となっています。 このような本では、写真史の流れを覚える、というよりは、興味のある写真家や作品を見つけ、それをじっくりと味わうきっかけとする、という読み方が面…

新しいオーディオを買う

新しいオーディオを買ったので、久しぶりに以前よく聞いていたCDを流してみました。 『菲賣品』というアルバムです。 このアルバムをよく聞いていたのが2003年、アルバム自体の発売は97年であり、収録されている曲目は90年代半ばのものが中心となっていま…

『万葉の歌人たち』 岡野弘彦

2009/3/3読了 『万葉集』の成り立ちや歌人、そしておさめられた歌について解説した内容となっています。 特に、当時の歌の持っていた役割を述べた部分が印象に残っています。古代においては、歌はそのものとして歌われていたわけではなく、旅の不安を鎮める…

『クラッシュ』 ポール・ハギス

2009/3/4鑑賞 衝突し合う者たちの和解は、古典的なストーリーの枠組みだと思います。しかし、その古典的な枠組みを、人種も階級も異なる十数人もの人々に演じさせたらどうなるか、それを描いたのがこの映画になります。 まず、演出面の素晴らしさに驚かされ…

『ハワーズ・エンド』 フォースター

2009/2/28読了 この小説を紹介した池澤夏樹氏は、次のように述べています。 「違う文化を出自とする人間たちが出会い、愛し合うようになる。しかし人と人の間で文化は衝突し、愛は苦戦を強いられる。」 作品では、知識階級のシュレーゲル家の人々、実務家の…

『トリコロール/青の愛』 クシシュトフ・キエシロフスキー

2009/2/25鑑賞 前回この映画を観たのが1999年、じつに10年ぶりに見直したことになります。今回見直してみて、覚えている部分は主人公が通うスポーツクラブのプールの場面だけでした。当時の私にとって、この映画のインパクトはそれほど小さかったのだと思い…

『悪の華』 シャルル・ボードレール

近代都市のおける頽廃や叛逆の情熱を描いたものとして著名な作品ですが、現在の視点から読むとそれほどショッキングな内容とは感じられません。それは、あるいはこのような内容を当然のものとしてしまうほど、ボードレールの影響は大きかったことの証左と考…

『パーソンズ 医療社会学の構想』 高城和義

2009/2/22読了 パーソンズの基礎的な理論を説明しながら、その理論をもとに医療社会学の展望を考えていく内容となっています。 理論については「行為理論・役割概念」(51)「逸脱モデル」(70)「パターン変数」(90)「AGIL図式」(137)等、彼の主だった枠組みが…