2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

東南アジアを知る/鶴見良行

2008/1/25-1/27 著者の東南アジア研究の方法論をまとめている。著者独特の方法として「一を聞いて十を知る」「モノから考える」「海の側からみる」といったものがある。印象に残った箇所の一つとして、「辺境」について述べた次の部分がある。 「東南アジア…

冬の青空

今日の名古屋の空は、高く青く澄んでいる。光の粒子が見えそうなほど太陽が明るい。 冬のこのような空が好きだ。それは、澄みきった空気とともに、あるノスタルジーを思いおこさせる。 私が生まれ育った街は、冬になると雪におおわれるようなところだった。…

人類の星の時間/ツヴァイク

2008/1/5-1/24 人類史に決定的な影響を及ぼした「星の時間」たちを綴る短編集。 傑作だったのは、アメリカ―ヨーロッパに海底ケーブルを引いた男の話。 主人公サイラス・W・フィールドは二度の失敗のあと、三回目でようやくケーブル敷設に成功する。しかし、…

バナナと日本人/鶴見良行

2008/1/19-1/23 一商品であるバナナから、フィリピン・ミンダナオ島の農民と日本の流通業者、アメリカの多国籍企業の関係をあぶり出す。 現在のプランテーション経営の起源はダバオ麻農園までさかのぼることができる。その時代に作られた農場経営の制度は戦…

エデンの東/エリア・カザン

2008/1/22 一九一〇年代のアメリカの地方都市を舞台に、父と二人の息子の葛藤、愛を描く。 感動的だったのは、キャルが父親の事業の損失を補うために自分で稼いだ金を、父親から拒まれる場面。父親への愛の精一杯の表現であるはずのお金を、汚いものとして拒…

アジアの不思議な町/巌谷國士

2007/1/7-1/18(〜p142,p292〜) 文学者の眼によってアジアがどう表象されるのか、という興味から読んでみた。 北京にユートピア都市のおもかげを見るなど、シュルレアリストならではの独創的な視点が随所に見られる。ただ、エッセイが書かれた時代のせいもあ…

ダンケルク/アンリ・ヴェルヌイユ

2008/1/15 英仏海峡をのぞむフランスの町、ダンケルクを舞台に、兵士たちの人間模様を描く。 兵士たちはとにかくよく話す。そして話の中に、こちらがくどさを感じるくらいに冗談を織り交ぜる。 この映画はド・ゴールの肝いりで作られたとのことだが、そのせ…

くるみ割り人形とねずみの王様/ホフマン

2007/1/6-1/14 バレエ『くるみ割り人形』の原作となった小説であるが、かわいらしく幻想的なバレエとは違い、どこか俗悪さ・不気味さがただよう。たとえば下記のような文章を見つけたときには、思わずにやりとしてしまった。 「姫に再会すると、二人の使者は…

オン・ザ・ボーダー/沢木耕太郎

2007/12/29-2008/1/4 著者の二〇代の頃の旅から、最近の旅までの記録をまとめたエッセイ集。 最近の旅では、ブラジルやベトナムの記録がある。若い頃の文章から伝わるみずみずしさや感動はないが、旅の経験を重ねたなりに楽しもうとする著者の姿勢が感じられ…

東京から考える/東浩紀・北田暁大

2007/12/29-1/2 二〇〇七年初頭にベストセラーとなった、二人の若手思想化が「東京」について述べた本。 二人の立場の違いとして、たとえば街の郊外化・無個性化に対し、東はヴァーチャルな空間で個性が保たれる以上、そもそも都市に個性が必要なのか、と疑…