2009-01-01から1年間の記事一覧

[芸術] [映画]十二月に読んだ本・観た映画

ブログに書いた作品のほか、十二月は以下の作品を鑑賞した。 12/1『黄色いロールス・ロイス』 アンソニー・アスクィス 12/4『シャレード』 スタンリー・ドーネン 12/10『秋日和』 小津安二郎 『マタイ受難曲』 礒山雅 12/11『道』 フェデリコ・フェリーニ 12…

『ガレージ』 アガン・セントーサ

2009/12/24鑑賞 3年前に製作されたインドネシアの映画となる。 舞台となる街並みには古びた建物が多く、ストーリーも大味なところがある。しかし、登場人物の生活や、彼らの音楽への接しかたに目を向ければ、別の様相が見えてくる。 彼女たちの髪型や服装を…

『明治大正史世相篇』 柳田国男

2009/11/18読了 内容は前半と後半で若干趣が異なっている。 前半は人々の生活に焦点を当て、著者流の「唯物史観」的な考え方、そこから伝統や固有文化の歴史性をあぶりだすようなものとなっている。 個々の話題としては、以下のものが扱われている。 ・市場…

十一月に読んだ本・観た映画

ブログに書いた作品のほか、十一月は以下の作品を鑑賞した。 11/1『リチャード3世』 子供のためのシェイクスピアカンパニー 11/8『絵画と写真の交差 印象派誕生の軌跡』 名古屋市美術館 11/11『探偵物語』 根岸吉太郎 11/21『雨の味』 グロリア・チー 11/23…

『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』 河合隼雄 村上春樹

2009/11/19読了 コミットメントというのは何かというと、人と人との関わり合いだと思うのだけれど、これまでにあるような、「あなたの言っていることはわかるわかる、じゃ、手をつなごう」というのではなくて、「井戸」を掘って掘っていくと、そこでまったく…

『フランス映画史の誘惑』 中条省平

2009/11/8読了 詩的レアリスム 観客の心をとらえたのは、そうした物語を通じて表現されるペシミズムの強烈さでした。それは一見、非常にリアリスティックな目で描かれているように見えながら、じつはそうではありません。人間の運命への敗北、ペシミスティッ…

『<映画の見方>がわかる本』 町山智浩

2009/10/31読了 ロッキーも、ブロディも、ルークも、ジョン・ウェインのように「あらかじめ」ヒーローとして登場するわけではない。どこにでもいそうな、つまりニューシネマ的な「かっこ悪い男」である。「正義」や「名誉」や「愛国心」にも興味はない。しか…

『幼年期の終わり』 アーサー・C・クラーク

2009/10/15読了 「それだけではありません。しかし、あなたがたにはいま以上に真実に近づくことはできないでしょう。時間と空間を超えるかのような不思議な力を持った人々は、太古の昔から大勢存在していました。しかし、人類はその力を理解できなかった。解…

一〇月に読んだ本・観た映画

ブログに書いた作品のほか、一〇月は以下の作品を鑑賞した。 10/2『美しき町・西班牙犬の家 他六篇』 佐藤春夫 10/5『馬喰一代』 中山正男 『ヘッセ詩集』 ヘルマン・ヘッセ 10/8『口笛が流れる港町』 斎藤武市 10/11『ギターを持った渡り鳥』 斎藤武市 10/1…

『シンス・イエスタデイ』 F・L・アレン

2009/10/25読了 今年の夏に読んだ『オンリー・イエスタデイ』の続編となる本書だが、前作が大衆の生活の描写に力点を置いていたのに対し、本作は政治・経済などより大枠のものに多くの部分が与えられている。 それは、一九三〇年代のアメリカ生活の中心は明…

『村上春樹『1Q84』をどう読むか』

2009/9/27読了 僕らだけじゃなくて、メディアの二次三次情報にとどまらず、信者と接触したり直接調べた人は皆同じものを感じていると思うけど、まず信者たちの邪気のなさですよね。それが一番のポイントだと思います。あの凶悪な事件と彼らの性質とのブレに…

『音楽の聴き方』 岡田暁生

2009/10/11読了 自分の聴き方に自覚的になること いずれにせよ私たちは、他のどんな芸術にも増して音楽体験は、こうした生理的な反応に左右されやすいことを、よく自覚しておいた方がいい。「自分はこういうタイプのメロディーにぐっと来てしまうクセがある…

『約束された場所で』 村上春樹

2009/10/4読了 元信者の視点から ――終末というのは要するに、今ここにあるシステムが全部チャラになってしまうことですね。 リセットですよね。人生のリセット・ボタンを押すことへの憧れ。たぶん僕はそういうことを思い描くことによって、カタルシスという…

『現象学入門』 竹田青嗣

2009/9/13読了 現象学的還元とは 現象学的「還元」とは「事象それ自身に立ち戻ることだ」とか、「純粋意識」の場面に立つことだ、などという言い方がある。これらの言い方はまったく誤りではないにせよ、極めてあいまいであり、かつ誤解を呼びやすいものだ。…

九月に読んだ本・観た映画

ブログに書いた作品のほか、九月は以下の作品を鑑賞した。 9/1 『雨月物語』 溝口健二 9/4 『野火』 市川崑 9/5 『地獄の季節』 アルチュール・ランボー(小林秀雄 訳) 9/6 『スカイ・クロラ』 押井守 9/9 『奇厳城の冒険』 谷口千吉 9/10 『日本沈没』 森…

『現象学的社会学』 アルフレッド・シュッツ

5年前に読み、引越しの際に実家に送ってしまった本であるが、帰省したのを期に、アンダーラインを引いた部分を中心に再読した。 ゴッフマンの理論的根拠となったシュッツ社会学の要諦をまとめた本書であるが、内容は私たちが「日常世界」に対し、どのような…

『古寺巡礼』 和辻哲郎

2009/9/14読了 『万葉集』の世界と仏教美術の世界とは全然食い違っている。それは単に抒情詩と造形美術との差異ではない。趣味や要求や願望や、要するに心情の根本をなすものの差異である。一つの時代にかくのごとき二つの世界があるということは、現在目前…

『ドミニック』 ウジェーヌ・フロマンタン

2009/9/6読了 机にした石はほのかにあたたかく、私の手のすぐ横では、やわらかい日ざしを浴びて蜥蜴がのんびりと這っていました。木々はもう緑ではなくなり、日の光も烈しさを失い、影という影が長く伸び、雲の行き来もおだやかになっていて、それらすべてが…

『アンダーグラウンド』 村上春樹

2009/9/5鑑賞 私はインタビュイーを前にして、その限られた二時間のあいだに、意識を集中して「この人はどういう人なのか」ということを深く具体的に理解しようとつとめたし、それを読者にそのままの形で伝えようと、文章化につとめた。…… そのような姿勢で…

『武蔵野夫人』 溝口健二

2009/8/28鑑賞 「この手紙をお読みになる頃に、私はもうこの世にいないでしょう。 わたしは逝く前に、あなたに言い残しておきたいことがありまあす。 あなたがあれほど愛している、うつくしい武蔵野、でも、その武蔵野はあなたの夢であり、感情にしか過ぎな…

『日本の舞踊』 渡辺保

2009/8/20読了 舞踊の定義とは 舞踊の定義は、私にとって、あの身体の声を聞くことに他ならなかった。舞踊を見るたのしみとは、あの身体の声を聞くたのしみであった。(中略) この定義は、また舞踊が人間にとってなぜ必要なものであるかということも示して…

八月に読んだ本・観た映画

ブログに書いた作品のほか、八月は以下の作品を鑑賞した。 8/14 『蜻蛉日記』(抄) 8/19 『海と毒薬』 熊井啓 8/22 『李香蘭』 浅利慶太蜻蛉日記 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)作者: 角川書店出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング発…

『アデン、アラビア』 ポール・ニザン

2009/8/7読了 理解しておくべきなのはこういうことだ。つまりアデンは、僕たちの母なるヨーロッパのぎゅっと凝縮されたイメージなのである、ここは圧縮されたヨーロッパなのだ。縦五マイル横三マイルという流刑地のように狭い空間に寄り集まった数百のヨーロ…

『先祖の話』 柳田國男

2009/8/13読了 日本人にとって死者の魂とは、舶来の仏教思想のように天高く、あるいは地深くにあるものではなく、身近な山の上から私たちの生活を見下ろしているものであること、そして盆や正月とは、その霊を迎えに行き、そして送り届けるものであることが…

『オンリー・イエスタデイ』 F.L.アレン

2009/8/9読了 1920年代記として著名な本書であるが、時代の客観的描写よりはむしろ、その時代の道徳律の変遷に力点が注がれている。そして、この著書からは、繁栄の時代とされる1920年代に通奏低音として流れる、幻滅や諦念や刹那的な感情が感じられる。 人…

『1Q84』 村上春樹

2009/7/17読了 彼にとって物語とは? 物語の森では、どれだけ物事の関連性が明らかになったところで、明快な解答が与えられることはまずない。そこが数学との違いだ。物語の役目は、おおまかな言い方をすれば、ひとつの問題を別のかたちに置き換えることであ…

七月に読んだ本・観た映画

ブログに書いた作品のほか、七月は以下の作品を鑑賞した 7/9 『奇人たちの晩餐会』 フランシス・ヴェベール 7/20 『巨匠たちの映画術』 西村 雄一郎 7/23 『ランボー全詩集』 アルチュール ランボー(宇佐美 斉 訳) 7/29 『20世紀ノスタルジア』 原将人 7…

『写真の読みかた』 名取洋之助

2009/7/24読了 写真の読み方のルールとは レンズの眼の性質に人間が馴れたために、原因と結果をとり違えるのです。現在、低い建物を高く見せようとする時には、特に遠近感の強くなる広角レンズを使うのは、このとり違えを利用しているのにほかなりません。 …

『友だちのうちはどこ?』 アッバス・キアロスタミ

2009/7/18鑑賞 舞台は80年代後半のイラン。誤って持ち帰ってしまった友達のノートを、知らない集落に帰しに行くという、シンプルと言えばシンプルなストーリー。 しかし、一つ一つのシーンとして挟み込まれる、市井の人々の様子が面白い。 洗たくをしながら…

『老人と海』 ジョン・スタージェス

2009/7/4鑑賞 かつて老練な腕をふるっていた漁師の老人は、その腕も衰え、84日間一匹も魚を獲れていない。 彼は、時にサバンナのライオンを夢に見る。 ある日、彼は外洋に漁に出る。食料は少なくなり、朦朧とする意識の中で、交尾期のイルカやクジラの群れの…