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『不思議の国のアリス』 英国ロイヤル・バレエ

2012/6/23鑑賞 ローレン・カスバートソン、セルゲイ・ポルーニン 英国ロイヤル・バレエ16年ぶりの新作として、2011年2月に初演された作品。 作品の楽しさはもちろんのこと、その演出の随所に「いまの芸術作品」を感じさせる、素晴らしい舞台でした。 2000年…

『家族』 山田洋次

2012/4/7鑑賞 BSプレミアムの特集で3月に放送された作品。タイトルがあまりに直接的であるため、鑑賞を躊躇していたのだが、それを後悔させられるようなすばらしい作品だった。 名作であるため、多様な見方ができる作品だが、同じくロードムービーの傑作であ…

『転がる香港に苔は生えない』 星野博美

2010/12/30読了 10年近く前に「話題の本」として、多くの本屋で平積みにされていた本であったと思う。当時、気になってはいたが読まずじまいであり、発刊から10年を経て、ようやく読むことができた。 90年代特有の香り 単行本の発刊は2000年であり、96〜98年…

『Orzボーイズ!』 ヤン・ヤーチェ

2010/10/20鑑賞 NHK アジア・フィルム・フェスティバルより 「次世代の映画」を強く感じさせる作品であった。 基本的には幼少時のノスタルジアを扱った作品であり、例えば何機ものファンでトイレットペーパーを飛ばし、愉しさを覚える感覚や、一人の時に…

『オンリー・イエスタデイ』 F.L.アレン

2009/8/9読了 1920年代記として著名な本書であるが、時代の客観的描写よりはむしろ、その時代の道徳律の変遷に力点が注がれている。そして、この著書からは、繁栄の時代とされる1920年代に通奏低音として流れる、幻滅や諦念や刹那的な感情が感じられる。 人…

『クラッシュ』 ポール・ハギス

2009/3/4鑑賞 衝突し合う者たちの和解は、古典的なストーリーの枠組みだと思います。しかし、その古典的な枠組みを、人種も階級も異なる十数人もの人々に演じさせたらどうなるか、それを描いたのがこの映画になります。 まず、演出面の素晴らしさに驚かされ…

ベルリン、僕らの革命/ハンス・ワインガルトナー

2008/10/24 「ロスジェネ」の若者たちを描いた、ドイツ側からの回答という印象を受けた。 ストーリーは、社会運動を行う若者たちが大会社の重役を誘拐する。重役はかつての革命の闘志であり、若者たちの行動を非難しながらも、思想には共感する。それに三人…

存在の耐えられない軽さ/クンデラ

2008/9/9-10/5 小説論としての小説 「人間生活は楽譜のように構成されている。人間は美の感覚に先導されて偶発的な出来事(ベートーベンの音楽、駅での死)をモチーフに変えるのであり、このモチーフがのちに人生という楽譜に書きこまれることになる。人間は…

ゼロ年代の想像力/宇野常寛

2008/9/7-9/16 ゼロ年代とはどういう時代か 「重要なのはその物語の内実ではない、態度=あり方なのだ。ゼロ年代における物語回帰の問題点はむしろ「人間は何か(の価値、物語)選ばなければいけないのだから、信じたいものを信じればいいのだ」という「あえ…

東京オリンピック/市川崑

2008/8/20-8/22 東京オリンピックの記録映画であるが、当時の世相を記録した、極めて良質なドキュメンタリーでもあると感じた。 たとえば開会式の場面では、多くの国の選手団が感動的なアナウンスとともに入場してくると共に、天皇の姿が映し出されるが、そ…

<奇跡の映像 よみがえる 100年前の世界> (BS世界のドキュメンタリー)

2008/7/26-8/8 二〇世紀初頭の資産家、アルベール・カーンのコレクションを基に、当時の人々の生活をひも解いていく、全九回のシリーズ。 カーンは平和の実現のためには、ほかの国の人々の生活を理解することが必要だと考え、『地球映像資料館』というコレク…

推手/アン・リー

2008/5/13 ニューヨークの息子夫婦の家に越してきた老人が、家を出て自分の居場所を見つけるまでを描く。 『恋人たちの食卓』と同様、家族と世代間の葛藤をテーマに描いている。この映画ではそれに加え、アメリカに暮らす中国人社会の様子も垣間見ることがで…

ミッドナイト・エクスプレス/沢木耕太郎

2008/2/15-3/16 わたしも、この本の旅ほど刺激的なものではないが、沢木氏と似たような旅をしたことがある。もちろん期間はだいぶ短いものであるが。 そのような旅をやめてから、すでに四年以上たっている。そして、当時の旅や生活は、自分の中ではすでに一…

細雪/市川崑

2008/2/23 この映画には、独特の浮遊感が漂っていると感じた。舞台は現実の大阪や京都であるのに、どこか別世界の出来事のような印象を受けるのだ。そう感じさせる原因について、次のように考えてみた。 映画の舞台は昭和一三年の大阪、公開は四五年後、昭和…

地獄の黙示録/コッポラ

2007/12/15-12/17 ひとりの軍人の眼を通し、ベトナム戦争時のベトナムとアメリカ軍を描く。 上陸作戦を演出するテレビ局や、プレイメイトに興奮する観光客気分の米兵など、当時のアメリカの堕落を描く一方で、戦争やベトナムという土地の持つ悪魔的な面も見…

タクシードライバー/スコセッシ

2007/8/2-3 夜のニューヨークを舞台に、一人のタクシードライバーの(非)日常を描いた作品。 冒頭、世間に対する愚痴を言いながら、主人公は夜の街をタクシーで流す。サム・テイラー風の音楽がBGMとして流れるが、まずこの場面の気持ちよさに魅せられた…

荒野へ/ジョン・クラカワー

2007/1/21〜2/4 「ところが、マッカンドレスが彼の世界に飛び込んできて、老人がこつこつ築いてきた孤塁は根底から崩されたのである。マッカンドレスといっしょにいることは楽しかったが、彼らの間に芽生えはじめた友情はまた、自分がいかに孤独であったかを…