バナナと日本人/鶴見良行

2008/1/19-1/23
一商品であるバナナから、フィリピン・ミンダナオ島の農民と日本の流通業者、アメリカの多国籍企業の関係をあぶり出す。
現在のプランテーション経営の起源はダバオ麻農園までさかのぼることができる。その時代に作られた農場経営の制度は戦後のバナナ農園にも引き継がれる。米系の多国籍企業がバナナ生産の上流から下流まで手を伸ばして利益を拡大させる一方、フィリピンの契約農家は借金を抱え困窮している現状が浮かび上がる。
著者は、バナナといった身近な商品からものを考える意義を次のように述べている。
「私たちは豊かでかれらは貧しく、だから豊かな私たちが彼らに思いを及ぼすべきだというのではない。作るものと使うものが、たがいに相手への理解を視野に入れて、自分の立場を構築しないと、貧しさと豊かさの違いは、――言いかえれば、彼らの孤独と私たちの自己満足の距離は、この断絶を利用している経済の仕組みを温存させるだけに終わるだろう。」(224-225)