マラッカ物語/鶴見良行

2008/2/11-3/15
本書での著者の主張は、歴史学大国主義史観を改めるべき、というところにある。
著者はその主張を、海賊が国家公認の行為であったこと、西洋が香辛料に注目する前から東南アジアの交易社会は存在したこと、アヘンは中国より先にまず東南アジア人を犯していたこと等を例示しながら進めていく。支配層の側からではない、民衆の視点から歴史を見ていくことの重要性を、著者は次のように締めくくる。
「(マラッカ海峡問題の)解決は、今日の大勢とはまったく逆の方向にしかない。海峡の重みを住民と利用者が平等に負担する「解放」の状態へと向かう方向である。利用者であるわれわれ日本人にとって、その第一歩は、どこまでも豊かになろうとする、ほとんど幻想的な暮らしのありようを改めることだ。その意味でわれわれもまたマラッカ海峡解放の当事者である。
マラッカ海峡を「民衆の海、民衆の島」に変えてゆく方向こそ日本人の求めるべき道だ。私はそう考えている。」(366)