近年の時代を象徴する出来事をもとに、ネグリの考え方が述べられていますが、その根幹となるのは「伝統的左翼批判」と「<共>の思想」です。この二つを基盤として、氏の思想が変奏されています。
たとえば、運動に対する氏の考えは次のようになります。
運動のさまざまな目標は対話を通じて、つまり、皆がともに参加し関与するということを通じて構築されるようになるのであり、このことが意味しているのは、運動主体がマルチチュード的なものとなる(おびただしい数になる)ということなのだと。ようするに、運動はさまざまな特異性たちから構成されるものだということ、そして、主観性それ自体もまた、さまざまな特異性たちからなるひとつの複合体なのであって、ひとつのアイデンティティではないということです。ここに存在しているのはもはや「核」ではなく、あくまでネットワークと関係性であるということ。(上153)
また、政治、その媒介となるインターネットについては次の考え方が述べられます。
コントロール型のオーソリティではなく、参加型のオーソリティです。現状では、このような条件でなければ、オープンな<構成するプロセス>(⇔<構成する権力>)は始められないでしょう。われわれにはインターネットという<共>がある。これは議論の余地のない事実だと思います。さらに、それを自分たちのものにしようとする力があります。ですからわれわれは今こそ、<共>に関心をもつあらゆる力が参加できるようなエージェンシーをつくらなくてはなりません。そして、そのことによって自由でオープンなインターネットを維持する政治を確立しなければなりません。(下47)
この本ではプレカリアート問題についても考察されていますが、日本におけるそれが、「非正規雇用」や「ワーキングプア」につながるネガティヴな問題として取り上げられるのに対し、ここでの議論は「知識労働」など、次世代の働き方をめぐるポジティヴな問題として捉えられていることも印象的でした。
未来派左翼〈上〉―グローバル民主主義の可能性をさぐる (NHKブックス)
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未来派左翼〈下〉グローバル民主主義の可能性をさぐる (NHKブックス)
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