『パーソンズ 医療社会学の構想』 高城和義

2009/2/22読了
パーソンズの基礎的な理論を説明しながら、その理論をもとに医療社会学の展望を考えていく内容となっています。
理論については「行為理論・役割概念」(51)「逸脱モデル」(70)「パターン変数」(90)「AGIL図式」(137)等、彼の主だった枠組みが解説されます。
そして、それらの枠組みから医療を考えるとき、例えば病院の役割や死の意味づけを考える場合、次のような社会学的知見を得られることになります。

病気が長びくと、健康な家族成員は、病気を弱さの表現であるとして、病人に不寛容となり、過度に厳しい懲罰的制裁を課すかもしれません。このようにしてパーソンズは、病気をコントロールするメカニズムに不可欠な、許容―支持の側面と規律の側面とのバランスを維持することが、アメリカの家族において、とりわけ困難になっていると主張します。それゆえ、感情中立性を原則とする医療機関に病人を送りだす傾向が生み出されてくる、というのです。(119)

「絶対確実な世界」というイメージをつきくずしたカントの考え方を基礎として、死の意味についても、キリスト教の伝統に修正をせまる考え方が登場してきます。現代の科学を前提とするかぎり、「永遠の生命」や「人間の復活=よみがえり」を、文字どおりの意味で受容することは困難になっていますし、まして、「なんらかの種類の「地獄」における永遠の罪」などという考え方を支持することは、より困難になってきている、とパーソンズはみています。「「より高い」水準の実在、つまり「超自然的」世界という観念」は、なくなっていないものの、「それを、現生の経験から単純に推測することによって「可視化」することは、ますますむずかしくなっている」。(183-184)

パーソンズ―医療社会学の構想

パーソンズ―医療社会学の構想