2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ホテル・ルワンダ/テリー・ジョージ

この映画の様に、圧倒的な善を見せてくれる作品に関しては、あまり批判めいたことはしたくないと考えてしまいます。 ただ、終始気になったのが、あくまで白人からみたルワンダの物語が描かれている点です。彼ら彼見ればルワンダの紛争は「民族紛争」ではなく…

中国行きのスロウ・ボート/村上春樹

1980年から82年にかけて執筆された7つの短編が収められています。 『貧乏な叔母さんの話』『カンガルー通信』『午後の最後の芝生』では、強い望みを持たない、あるいは明らかに非現実的で意味がない望みを持った主人公が、居心地の悪い状態を押し付けられて…

バスを待ちながら/フアン・カルロス・タビオ

ストーリーとしては、夢オチを採用するなど荒削りなところがあり、登場人物の性格設定や行動に関しても、やや稚拙な印象を受けました。テレビドラマ的な映画といってもいいかもしれません。 ただ、そのような現代的な物語が、前近代的なキューバ社会の中に置…

アンドリュー・ワイエス―創造への道程(みち)―/愛知県美術館

先日亡くなったこの画家は、生涯にわたりペンシルヴァニア州とメイン州の二つの場所を描き続けていたそうです。 今回、まとまった作品展を初めて見ましたが、自分の幼少時代を思い起こさせるような作品が非常に多く展示されていました。それは、これらの作品…

旅する力/沢木耕太郎

「深夜特急」の旅や、それにまつわるエピソードが書かれた内容となっています。 氏の他の作品やエッセイですでにふれた話が多かったため、これまでの氏の作品に比べ、読後の印象は薄いものでした。しかし、「深夜特急」の旅から東京に戻った時の次の印象には…

博士の異常な愛情/キューブリック

作品自体は比較的シンプルで分かりやすく、素直に楽しめました。ただこの映画も『2001年宇宙の旅』同様に、さまざまな仕掛けが隠されており、そこから独自のメッセージを読み取ることができる作品なのでしょう。 傑作と呼ばれるこの作品の本来の楽しみは…

未来派左翼/アントニオ・ネグリ

近年の時代を象徴する出来事をもとに、ネグリの考え方が述べられていますが、その根幹となるのは「伝統的左翼批判」と「<共>の思想」です。この二つを基盤として、氏の思想が変奏されています。 たとえば、運動に対する氏の考えは次のようになります。 運…

海辺のポーリーヌ/エリック・ロメール

エリック・ロメール監督の<喜劇と格言劇>シリーズ第3作。 淡々とした中にもストーリーに起伏があり、洗練されているけれどもどこか素朴な印象もある、不思議な魅力を持った作品です。 映画自体も良かったのですが、25年前の作品が、これほどまでに(悪い…

ダンス・ダンス・ダンス/村上春樹

この物語は、主人公の次のような社会認識と自己認識から始まります。 当時はそうは思わなかったけれど、一九六九年にはまだ世界は単純だった。機動隊員に石を投げるというだけのことで、ある場合には人は自己表明を果たすことができた。それなりに良い時代だ…