2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧

一月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 1/7 『ナマコの眼』 鶴見良行 1/16 『星三百六十五夜(下)』 野尻抱影 1/28 『汚名』 アルフレッド・ヒッチコック 1/29 『フローラ逍遥』 澁澤龍彦 『中世の秋』 ホイジンガ

小さなモノから歴史を掘りおこす −『ナマコの眼』鶴見良行 4/6 

ナマコのような、一見たわいもないものは、せいぜい小さな貿易業者が、細々と商っていたものと思われがちである。だが、その流れを丹念に追って行けば、今まで見えていなかった、歴史や地理の事実を掘り起こすこともできる。 著者は、江戸時代の輸出品として…

海洋から大地を見る −『ナマコの眼』鶴見良行 3/6

国家単位でモノを考えなければ、私たちの視点は、次第に大地から海へと移っていく。国は土地を支配できるが、海洋は支配できないからだ。 そして、海洋に視点を移せば、「中継地点」としての機能を持つ場所の役割が大きくなる。たとえば、フィリピンのマニラ…

国家ではなくヒトから世界を見る −『ナマコの眼』鶴見良行 2/6

鶴見氏がもっとも強く主張していること、それは国単位でものを見ること、中央からものを見ることへの批判である。 国家を単位として歴史を記述できるのは、ごく限られた時代と土地にしかすぎない。それに歴史家たちは英雄に光を当てて記述しているから、歴史…

ハノイの古書店にて −『ナマコの眼』鶴見良行 1/6

この本との出会いは、今から14年前、ハノイの古書店においてであった。そのころ私は東南アジアを二ヵ月ほど周遊しており、移動時間に読む本を買うため、その店に入ったのだった。 店の主な客は白人の旅行客であるらしく、英語のペーパーバックが多いが、何割…