2017-01-01から1年間の記事一覧

十二月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 12/1 『大いなる幻影』 ジャン・ルノワール 12/2 『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』 アービン・カーシュナー 12/6 『ゲームの規則』 ジャン・ルノワール 12/15 『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』 リチャード・マーカンド 1…

『恋愛のディスクール・断章』はどう読むべきか? −『ロラン・バルト (シリーズ 現代思想ガイドブック)』2/2

『恋愛のディスクール』は、バルトによる快楽主義の実践と言える。彼はこの本で、恋愛を様々な要素に分解し、科学する態度をとる。しかし、ともすれば安直な内容になりがちな方法で著されたこの本から、私たちは皮相なものを受けとることはない。 恋する主体…

『恋愛のディスクール・断章』はどう読むべきか? −『ロラン・バルト (シリーズ 現代思想ガイドブック)』1/2

昨年から、ことある度に読んでいる、ロラン・バルトの『恋愛のディスクール・断章』。文体もきれいだし、内容も恋愛にまつわる様々がちりばめられていて、自分にも思いあたることも多く面白いのだが、なかなかバルトの考え方がつかめない。 そのために、副読…

絶望的だけどあたたかい、不思議なお話 『かもめ・ワーニャ伯父さん』2/2

作品を支配する「暗さ」や「かなしみ」がどこからきているかといえば、それはこの生活から抜け出したくても抜け出さない、という虚無感なのだろうと思う。 食べていけるだけの生活はできている。家族も仲間もいる。でも毎日同じことの繰り返し。会話といえば…

かなしい喜劇 『かもめ・ワーニャ伯父さん』1/2

チェーホフが晩年に発表した四大喜劇のうち、『かもめ』『ワーニャ伯父さん』を読んだ。 一般に、チェーホフの四大喜劇は、先に発表されたものほど暗く、後半になるほど、希望が大きくなるといわれている。今回呼んだ二作は、その一番目、二番目の作品である…

十一月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 11/1 『エイリアン』 リドリー・スコット 11/8 『お気に召すまま』 パウル・ツィンナー 11/5 『じゃじゃ馬馴らし』 サム・テイラー 11/23 『恐怖の報酬』 アンリ=ジョルジュ・クルーゾー

モーツァルトと二人の批評家 4/4

小林秀雄氏のモオツァルト論は、確かに格好いい。こんな切れ味の良いクラシック評論は、なかなかお目にかかれるものではない。 だが、同時に、モーツァルトとは、そのような重厚な論じ方をされるべき作曲家なのだろうかとも思うのだ。その音楽は、もう少し軽…

モーツァルトと二人の批評家 3/4

楽理の知識と、豊かな文学的教養に基づいた吉田秀和氏のモーツァルト論。それに比べて、小林秀雄氏のモーツァルト理解は、一面的なのだろうか? 昭和二十一年に発表された、小林氏の代表作『モオツァルト』を読み直してみる。ケレン味溢れる言い回しのなかで…

モーツァルトと二人の批評家 2/4

では、吉田氏の好んだモーツァルトの作品は、どのようなものだったのか?先の評論を読めば、氏の趣味が良く理解できる。 たとえば、「モーツァルト的」と言えるような響きをもつ、ピアノ・ソナタ十三番と十五番(旧十八番)。十三番は、ギャラント・スタイル…

モーツァルトと二人の批評家 1/4

疾走する悲しみ。モーツァルトの音楽を表現するために、小林秀雄氏が使用した言葉は、あまりに人口に膾炙している。しかし、モーツァルトの作品世界は、このひとつの言葉に集約するには、あまりに多様性を帯びているだろう。 吉田秀和氏は、音楽評論を書くよ…

十月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 10/1 『かもめ・ワーニャ伯父さん』 チェーホフ 10/4 『リア王』 アンドリュー・マカラ 10/6 『スケバン刑事』 田中秀夫 10/18 『メイド・イン・アビス』 小島正幸 10/20 『アバター』 ジェームズ・キャメロン 10/21 『検証 東…

九月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 9/2 『マクベス』 オーソン・ウェルズ 9/3 『音楽をめざす絵画』 9/15 『里見八犬伝』 深作欣二 9/16 『シザーハンズ』 ティム・バートン 9/29 『ロラン・バルト (シリーズ 現代思想ガイドブック)』 グレアム・アレン

『芥川竜之介随筆集』

芥川竜之介といえば、その容姿や作品から、知性にあふれるシャープなイメージがある。そのため、彼の随筆にも、鋭い文明批評や人間に対する洞察を期待していた。 しかしその内容は、学生時代の思い出や友人たちの印象など、どこかほんわかしたものが多い。す…

八月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 8/3 『蘇える金狼』 村川透 8/4 『君の名は』 新海誠 8/5 『アーサー王伝説―7つの絵物語』 ロザリンド カーヴェン 8/18 『芥川竜之介随筆集』 『サマーウォーズ』 細田守 8/23 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ…

Setouchi 2017 3/3

最終日は、文教地区の建築(直島小学校、中学校)を見つつ、本村地区へ。ここには、ANDO MUSEUM、そして古民家を利用した「家プロジェクト」がある。 家プロジェクトでは、5つの展示を鑑賞できるが、ここでも時間をテーマにした作品が多い。目が…

Setouchi 2017 2/3

二日目は、直島へ。 この日は地中美術館、李禹煥美術館、ベネッセハウスミュージアムに行く。 地中美術館で紹介される作家は、クロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの3人だけ。どの作品も贅沢に空間を使い、心地よい時間を過ごすこ…

Setouchi 2017 1/3

今年の夏も、また瀬戸内に行った。昨年以来、1年ぶり。 最初の目的地は倉敷。大原美術館、大橋家跡、阿智神社、美観地区の夜景など、行きたかったところを見物する。大原美術館では、モーニングツアーにも参加した。学芸員のおじさんが、コレクションの由来…

星三百六十五夜/野尻抱影 2/2

こちらは、星に照らされた夜の風景の描写。著者の文章には、ときおり、夜の街や自然を扱ったものが見られる。ここでは、星は魅力ある背景となる。 こういう風が止むと、まだ午後であるのに、空は冴えた水浅黄に染まって、魂を吸いこみそうに深い。そして西山…

星三百六十五夜/野尻抱影 1/2

「星の翁」とも呼ばれる野尻抱影氏。その名の通り、星をテーマにした様々なエッセーを残している。この本ではその名の通り、1年365日を通し、1日1作ずつ文章が著されている。私も氏にならい、昨年の夏から1年かけて、ゆったりとこの本を楽しんできた。 星…

『ピアノを弾く哲学者 サルトル、ニーチェ、バルト』 フランソワ・ヌーデルマン 3/3

バルト―演奏のエロティックな現象学 ロラン・バルトもピアノについて様々に著述した哲学者であったが、その白眉は「演奏の現象学」ともいえるような、演奏そのものについての記録である。 バルトが、演奏する=”打つこと”によって追求したのは悦楽だった。ピ…

『ピアノを弾く哲学者 サルトル、ニーチェ、バルト』 フランソワ・ヌーデルマン 2/3

ニーチェ―転向させるものとしての音楽 ニーチェといえば、ヴァーグナーを称賛した哲学者として知られている。しかし、後にその音楽を否定したことは、少なくとも哲学の門外漢からは、あまり知られていないのではないだろうか。 抑鬱的、病的な傾向があるドイ…

『ピアノを弾く哲学者 サルトル、ニーチェ、バルト』 フランソワ・ヌーデルマン 1/3

サルトル、ニーチェ、バルトという、生涯ピアノを愛好した三人の哲学者。著者は、ピアノは単なる趣味にとどまるものではなく、三人の哲学にも重要な役割を果していると考え、彼らとピアノのかかわりを綴っていく。 楽器演奏が思想に影響を及ぼすなんて、何と…

七月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 7/5 『ジュリアス・シーザー』 スチュアート・バージ 7/7 『犬神家の一族』 市川崑 7/12 『シャイニング』 スタンリー・キューブリック 7/27 『ヘンリィ五世』 ローレンス・オリヴィエ 7/28 『モオツァルト・無常という事』 小…

『ひらがな日本美術史1』 橋本治 3/3

三嶋大社の梅蒔絵手箱 鎌倉時代は、美術史的には「写実の時代」ということになるのだろう。「王朝の美学」の後に写実の時代がやって来るということになると、この鎌倉時代というものがかなり「野暮な時代」のように思えてしまうのだけれども、しかし、「梅の…

『ひらがな日本美術史1』 橋本治 2/3

中宮寺菩薩半跏像 飛鳥時代の仏像の持つ肉体性は、「観念としての肉体」である。ここには、まだ肉体がない。精神性を表わす「顔」という肉体の一部だけがあって、首から下の肉体は、どうあっても、この顔を支える為の「身体という台」だ。飛鳥時代に、まだ肉…

『ひらがな日本美術史1』 橋本治 1/3

埴輪 いたって日常的だった「戦い」と「呪術」が、「国家」という特殊なものの特殊な部分として集約されて来る。それを「国家による独占」と言う人もいるだろうが、民衆の側から見れば、「国家による肩代わり」だ。邪悪な霊と恐ろしい外敵に対して、「国家」…

六月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 6/2 『トゥモロー・ネバー・ダイ』 ロジャー・スポティスウッド 6/6 『ピアノを弾く哲学者 サルトル、ニーチェ、バルト』 フランソワ・ヌーデルマン 6/9 『オセロ』 オーソン・ウェルズ 6/14 『ドラえもん のび太の大魔境』 西…

ショスタコーヴィチの交響曲

マーラー以後、もっとも偉大な交響曲作曲家の一人に数えられるショスタコーヴィチ。その作品の中では、印象的なな最終楽章があり、演奏機会の多い第5番や、「レニングラード」という通称をもつ第7番が有名であり、この二曲がそのまま作曲家の一般的なイメー…

クリスチャン・ボルタンスキー -アニミタス―さざめく亡霊たち-

昨年、東京都庭園美術館で開催された、個展の公式図録。展示品や旧朝香宮邸の写真のほか、ボルタンスキー氏へのインタビュー、学芸員による解説が収められている。 インタビューで、作家は「生と死について一貫して表現してきた」「今は神話を作り上げること…

五月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 5/5 『レ・ミゼラブル』 トム・フーパー 5/7 『都心ノ病院ニテ幻覚ヲ見タルコト』 澁澤龍彦 『クリスチャン・ボルタンスキー -アニミタス―さざめく亡霊たち』 5/11 『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』 押井守 5/12…