『アーキテクチャの生態系』 濱野智史

2009/2/14読了
ゼロ年代の日本におけるwebサービスを、「アーキテクチュア」をキーワードとして、生物学的観点から分析した内容となっています。
筆者は、日本でのwebサービスが、同様のシステムをもつアメリカとものと比べ違った利用のされ方をしている、あるいは独自の進化を遂げていることに注目し、webサービスが根付く上での社会的な素地や、先行サービスとの適合の重要性を指摘しています。
その上で、ネット上に設計された<都市空間>としての2ちゃんねる、コミュニケーションを行うことで人間関係の微細な「距離感」を測定するというmixiの隠れた利用目的、「いま・ここ性」を複製するアーキテクチュアとしてのニコニコ動画など、サービスの具体的な位置づけがなされていきます。
また、ニコニコ動画ケータイ小説のように「限定客観性」や「限定されたリアル」を持つ異なるアーキテクチュア間のコミュニケーション作法についての、筆者の次の提案も印象的です。

これらに対するオルタナティブとして筆者が提案したいのは、他の文化圏やコンテンツの内側に分け入り、そこに蓄積された「操作ログ」のなかから、それを「リアル」だと感じさせている「リテラシー」を<逆向きに>読み込んでいくという作業です。通常であれば、「リテラシー」の存在が「操作ログ」のスムーズなデコーディング(解読)を可能にしているのに対し、筆者が提案しているのは、それを逆の方向から、つまり「操作ログ」の側から「リテラシー」を解読していくということです。(略)コンテンツの生態系が今後ますます拡大し、その複雑さを増していくとすれば、私たちはその豊かさや多様性を理解するために、上のようなアプローチを採用することが有効なのではないのではないか。(300)

アーキテクチャの生態系

アーキテクチャの生態系