2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

あの夏、いちばん静かな海。/北野武

2008/8/27 北野監督らしい郊外の平面的な、奇妙に明るい風景の中で物語は進行する。 そして、これも監督らしく、人の心にずぶずぶとくる痛みを感じさせる作品。 この映画はcinefil imagicaで見たが、その紹介文で「登場人物のすべてが生々しい原色日本人像ば…

限りなき夏/クリストファー・プリースト

2008/8/9-8/26 朝日新聞の書評が印象に残り、夏休みを利用して読んでみた。 SFの短編・中編を集めたものなので、舞台は未来となっているが、登場する人々の感覚はどちらかといえば過去に属している感がある。 たとえばその感覚は、次のような表現の中に見…

亀も空を飛ぶ/バフマン・ゴバディ

2008/8/25 イラク戦争下の、イラク北部のクルド人社会の様子を、子供達のリーダー格であるサテライトを中心に描く。 印象的なのは、子供たちが非常にシビアで、冷めた視点を持っていること。戦争状態が日常であり、難民や地雷による被害をリアルに経験してい…

東京オリンピック/市川崑

2008/8/20-8/22 東京オリンピックの記録映画であるが、当時の世相を記録した、極めて良質なドキュメンタリーでもあると感じた。 たとえば開会式の場面では、多くの国の選手団が感動的なアナウンスとともに入場してくると共に、天皇の姿が映し出されるが、そ…

ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る/梅森直之

2008/8/13-8/17 二〇〇五年にアンダーソンが早稲田大学で講義した内容と、著者がアンダーソンの思想を解説した内容が収められている。 講義の部分では、アンダーソンは『想像の共同体』の限界と、現在取り組んでいる思想について語っている。『想像の共同体…

ケータイ小説的/速水健朗

2008/7/27-8/9 ケータイ小説におけるリアル 「ケータイ小説とは、「投稿文化」「UGC」というキーワードを背景にしたコミュニケーションから生まれた作品群である。故に、「ケータイ小説におけるリアル」を、「実際にあった話」かどうかといったレベルで判…

<奇跡の映像 よみがえる 100年前の世界> (BS世界のドキュメンタリー)

2008/7/26-8/8 二〇世紀初頭の資産家、アルベール・カーンのコレクションを基に、当時の人々の生活をひも解いていく、全九回のシリーズ。 カーンは平和の実現のためには、ほかの国の人々の生活を理解することが必要だと考え、『地球映像資料館』というコレク…

オン・ザ・ロード/ケルアック

2008/6/22-8/3 40年代後半のアメリカを舞台とした、「ビート・ジェネレーション」達の様相を描いた小説。「ビート」とは、音楽用語であると共に、「くたびれた」という意味もあり、著者がその言葉を使うときには、どこか明るい諦念のようなものがある。 彼ら…