2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

六月に鑑賞した作品

6/2 『悪い奴ほどよく眠る』 黒澤明/撮影 逢沢譲 6/7 『1941』 スティーヴン・スピルバーグ 6/10 『東京物語』 小津安二郎/撮影 厚田雄春 6/14 『泥棒成金』 アルフレッド・ヒッチコック 脚本 ジョン・マイケル・ヘイズ 音楽 リン・マーレイ 6/16 『秋…

『八月の光』フォークナー 加島祥造訳 5/5

(クリスマスの幼年時代)ランプの芯の上では炎がゆっくりと燃えつづけ、壁には、舞っている蛾の影が小鳥ほどの大きさにゆらめいた。窓の外から流れこむ空気に彼は闇を、春を、大地を嗅ぎ、感じとることができた。(202) (クリスマスの少年時代)いわば彼は…

『八月の光』フォークナー 加島祥造訳 4/5

(リーナの独白)『それにもしあの馬車がジェファスンまでずっと行くのなら、ルーカス・バーチはあたしの姿を見る前にあたしの馬車の音を聞くことになるんだわ。だって彼には、あたしの来たことは分からなくともあの馬車の音は聞こえるもの。だから彼が見な…

『八月の光』フォークナー 黒原敏行訳 3/5

(クリスマスの彷徨)彼はこの土地で育って大人になり、泳げない船乗りが水に突き落とされて泳ぎを覚えさせられうように、身体の形も物の考え方もこの土地に無理強いされて形づくられたのだが、この土地の実際の形や感触は結局何も知ることはなかった。この…

『八月の光』フォークナー 黒原敏行訳 2/5

(ハイタワーの独白)人はもう起きてしまった面倒よりこれから起きるかもしれない面倒のほうを怖れるからだ。変わることは危ないことだから、慣れている面倒にしがみつくんだ。そう。人は生きている人たちから逃げ出したいとよく言う。でも本当に厄介なのは…

『八月の光』フォークナー 1/5

4月に一週間ほどとった休暇、その後の5月の連休を利用し、このフォークナーの名作を再読した。 おそらく、古典と呼ばれる長編小説を読むのは、今年はこの一冊だけだろう。そう考えると、小説を読むという行為は、自分にとってずいぶんとしんどいものになった…