2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

逃げ去る恋/トリュフォー

2007/5/27鑑賞 主人公アントワーヌは、かつての恋をネタとして小説を出版している。映画は、主人公とネタにされた二人の女性、そして彼が「写真を見て一目ぼれした」という現在の恋人のサビーヌを中心に進む。物語は妻であるクリスティーヌとの離婚、かつて…

津軽/太宰治

2007/5/4-5/26(再読) 過去に読んだ本であるが、実に八年ぶりに再読した。以前読んだ時の記憶は断片的に残っているだけであり、読み返すと案の定忘れている箇所が多い。次のような風景描写はまったく覚えていなかったが、今回の読書で強く印象に残った。 「…

デュルケム「自殺論」を読む/宮島喬

2007/5/19-5/26 デュルケムは十九世紀後半の自殺増加の要因を、「近代的な自我の危機」としている。 「近代的な自我というものが危機を経験するときには、その危機の経験の仕方は二つあるということです。一つは、自己の内部に孤立化してとじこもるような危…

憎いあンちくしょう/蔵原惟繕(くらはらこれよし)

2007/5/24鑑賞 石原裕次郎・浅岡ルリ子扮する主人公が、依頼されたジープを東京から阿蘇まで運んでいくという物語。東京〜名古屋〜京都〜大阪〜四国〜九州と舞台が移り変わり、映画が撮影された昭和37年当時の風景が映し出される。大都市の埃っぽさ、地方の…

カラマーゾフの兄弟/プィリエフ

2007/5/6-5/19 ドストエフスキーの傑作小説を映画化した作品。小説の思想性を表現するまでにはさすがに至っていないが、役者や舞台装置等が素晴らしい。教会や裁判所などは、小説を読んだ時にイメージしていたものと違っており、当時のロシア社会の様子を知…

あら皮/バルザック

2007/4/28-5/17 魔法の力を持つ「あら皮」を手にしたことにより運命が変わっていく、ある青年貴族の物語。軽薄な女性たちとの恋愛に一度は絶望した主人公が、裕福で洗練された魅力を持つフェドラ、貧乏暮らしだが可憐で思いやりのあるポーリーヌという対照的…

ユング心理学入門/河合隼雄

2007/4/28-5/17 ・タイプについて 「ユングも指摘しているように、実際には、自分の反対の方の人を恋人や友人に選ぶ傾向も強いのである。これを簡単に述べると、自分と同型のひとに対しては深い理解を、反対方のひとに対しては効しがたい魅力を感じて結ばれ…

夢のある部屋/澁澤龍彦

2007/4/14-5/11 六十〜七十年代に書かれた澁澤龍彦のエッセイ集。オブジェや現代文化、エロティシズムに加え、彼が居を構えていた鎌倉についての記述もある。 「徹夜の仕事を終えて、朝風呂に入っていると、澄み切った声で最初のヒグラシが鳴き出す。それは…

澁澤龍彦との日々/澁澤龍子

2006/4/28-5/6 「澁澤との日々を改めて考えてみると、世間一般でいう、いわゆる家庭生活というものがあったのか疑問に思います。地に足つけて、しっかり日常を生きるというよりも、今でもそうなのですが、幻想のなかに生きているような、夢のなかにいるよう…