『資本論』を読む/伊藤誠

2007/9/17-9/23
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労働価値説

資本論』全体の基礎となる労働価値説とは、商品の交換価値は、各商品の生産に要する抽象的人間労働(⇔具体的有用労働)の量によって規定される、という学説である。
「『資本論』では、使用価値に対する価値の規定を、さらに価値の形態と実態とに二重化している。すなわち、商品が他の商品との交換を求める属性は交換価値の姿において価値の形態を示すとともに、その背後で交換価値を規定する労働の量関係を価値の実態としており、その両者の区分と関連が『資本論』の価値論の全展開を通じあきらかにされてゆくのである。」(34)

商品の物神性論

マルクスは商品経済社会について、あらゆる社会を通じて原則的に維持される労働の社会的関連が、商品相互の自律的運動により法則的に実現されるところに、商品自体が自然的に価値を有し、それ自体で動くもののような物神観が成立していることを批判的に解明する。(中略)商品の物神性は、さらに貨幣の物神性、資本の物神性に展開され、歴史過程のうちに人間がつくりだした貨幣や資本によって、人間が支配されるにいたる。」(65)

貨幣の蓄蔵

「商品流通のなかで、貨幣は「万物の神経」であり、直接的交換可能性を独占しているので、商品を販売して入手した貨幣を蓄蔵する「必要と情熱」が生じ、発展する。特に商品の販売にはときに時間がかかり、偶然に左右されるので、必要な商品を必要な時点で購買するためには、「前もって買うことなしに売っておき」貨幣蓄蔵を有していなければならない。金の生産源での取引を別とすれば、「あとに購買をともなわない販売は、ただすべての商品所有者のあいだへの貴金属の再配分を媒介するだけである。こうして、交易のすべての点に大小さまざまな金銀蓄積が生ずる」のであり、そこに「黄金欲が目ざめてくる」」(90)