新書アフリカ史/宮本正興、松田素二編

アフリカの古代から近代までの歴史の流れを概観した内容ですが、著者たちの共通認識は次の二つのものが柱となっていると感じます。

アフリカの経済・社会の独自性

西洋中心の歴史観ではとらえずらい特徴が、アフリカの経済・社会にはあり、トピックとしては「サハラは巨大な砂の海であり、海上貿易と同様、南北の交渉を促す場であったこと(32)」「ザイール川上流の『かけこみの森』としての存在(89-90)」「南部アフリカは移動社会であり、小国家分裂の伝統はこの地域の長期傾向であること(118)」などが指摘されています。

西洋への否定的視線

現在アフリカが抱えている問題の根源は、基本的には西洋諸国による侵略・植民地化にあったとし、この本ではそれを全否定するかのような論調が支配的となっています。
アフリカ史を専攻することが、ひとつの政治的立場の表明であるとしたら、西洋への否定的な言説には、それが如実に表わされていると思います。

新書アフリカ史 (講談社現代新書)

新書アフリカ史 (講談社現代新書)