2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ウェブ社会の思想/鈴木謙介

2007/10/21-10/30 手に届きそうな未来 「『シガテラ』が描こうとしている未来とは、カーニヴァルによってテンションを高めて、未来へ向けて驀進することでも、そうしたカーニヴァルによって未来を選ぶことを諦めてしまうことでもなく、「手の届きそうな未来…

カント『純粋理性批判』入門/黒崎政男

2007/10/7-10/30 時間とは?空間とは? 「分かりやすく言えば、時間・空間は、ものそのものが成立するための条件ではなくて、ものについての人間の認識が成立するための条件である。つまり、時間・空間はものの側にあるのではなくて、認識する側にある存在で…

私のように美しい娘/トリュフォー

2007/10/27-10/29 男をだまし続ける一人の悪女を描いた物語。若い社会学者の青年が刑務所で彼女を取材する、という形で彼女の遍歴が語られていく。取材を重ねるうち、青年が彼女に魅かれていき、彼女の無実を証明するまでに至るのだが、彼女はその青年までも…

チェーホフを楽しむために/阿刀田高

2007/9/25-10/21 チェーホフの恋愛観 「しかし、まあ、私としては、わからないこともない。この作品の主人公オーグネフは、女性には憧れていたがヴェーラを(本心において)好きでなかったのかもしれない。手近にあるものに憧れてはみたものの、いざとなると…

雪国/豊田四郎

2007/10/15-10/16 川端康成の同名小説の映画化。何年も前に原作を読んだが、印象的ないくつかの場面以外はすっかり忘れていた。 島村、駒子、葉子、行男の関係も、作品を見て初めて分かった部分が多い。 舞台となる北国の様子は、私の幼少時代の近い過去に、…

坊やの人形/侯孝賢他

2007/10/14-10/15 六〇年代の台湾を舞台にした三本のオムニバス映画。 第一話は妻子を養うためにサンドイッチマンになる男の話。第二話は圧力釜のセールスマン二人に起こる悲劇。第三話はアメリカ兵に撥ねられたことで大金を手にする家族の話。 いずれの物語…

風の歌を聴け/村上春樹

2007/10/8-10/14 「私はこの部屋にあるもっとも神聖な書物、すなわちアルファベット順電話帳に誓って真実のみを述べる。人生は空っぽである、と。しかし、もちろん救いはある。というのは、そもそもの始まりにおいては、それはまるっきり空っぽではなかった…

百年恋歌/侯孝賢

2007/10/10 3つの時代の恋人たちの模様を、それぞれの時代の様子を背景に描く。 第一部は1960年代。兵役中の男がビリヤード場の女を追いかける物語。 第二部は1910年代。外交官と遊郭で働く芸妓の恋の話。 第三部は2000年代。現代を舞台にした…

中央フリーウェイ

『中央フリーウェイ』という曲とともに思いおこされる、高校時代の記憶がある。 当時の私は、朝六時頃に朝食をたべながら、情報番組をみる習慣があった。ちょうどその時間には、首都圏の交通情報が放送されており、荒井由実の『中央フリーウェイ』をBGMに…

カオス・シチリア物語/タヴィアーニ兄弟

2007/10/7-10/8 シチリア島を舞台に四本のエピソードにエピローグを加えたオムニバス作品。 四本のエピソードでは、アメリカの息子に手紙を送り続ける母親、満月の夜に狼男になる夫、大きな瓶に翻弄される地主と小作人たち、自らの土地に墓地を要求する羊飼…

世界は村上春樹をどう読むか

2007/9/22-10/8 村上春樹が語る成功の理由 「不思議なことに、かつ素晴らしいことに――そしてここにこそ村上春樹の小説の驚異的な文学的成功の秘密がひそんでいるように思えます――村上の登場人物たちは、かつて確かだったものたちが崩壊していくことに、はじ…

自由を考える/東浩紀・大澤真幸

2007/9/24-10/7 「偶有性」と「共感」 大澤「偶有性というのは、他でもありうる、ということです。様相の論理を使えば、偶有性は、不可能性と必然性の否定です。つまり、可能だけれども必然ではないことが、偶有的なわけです。たとえば、今、皆さんは、ここ…

新・平家物語(二)/吉川英治

2007/8/26-10/5 ?保元の乱の顛末 ?信西の権勢と新院方の大量処刑 ?信頼の権力掌握 ?二条帝の六波羅行幸 ?平治の乱の勃発 「余談を述べすぎたが、以下、主上の御車が、ひとたび、皇居を脱して、六波羅の門へ向かうや、いかにそのことの結果が、時局に急激な転…