東南アジアを知る/鶴見良行

2008/1/25-1/27
著者の東南アジア研究の方法論をまとめている。著者独特の方法として「一を聞いて十を知る」「モノから考える」「海の側からみる」といったものがある。印象に残った箇所の一つとして、「辺境」について述べた次の部分がある。
「東南アジアの各地をよく調べてみると、植民地主義勢力は利潤のあがる土地だけを押さえ、そこを「中心」としていました。インドネシア全域にオランダの強制栽培が実施されたのではありませんし、フィリピン全土がアシエンダやプランテーションになったわけではありません。その他の土地は、見放していったのです。こうした土地を私は「辺境」と呼びます。
こうした辺境にも住民がいて、暮らしていました。重要なことは、かれらもまた立派に世界市場につながる産業を育てていて、それで暮らしをたてていたのです。ナマコ、ツバメの巣、フカのヒレなどがその好例です。ここでいう市場は、ヨーロッパではなく中国です。
ヨーロッパ植民地主義は、このように中国につながる東南アジアの市場生産を支配できませんでした。
オランダの「香料交易独占」というような表現にみられるように、東南アジアは、西洋植民地主義の手でヨーロッパの世界市場に組みこまれたように理解されていますが、そんなことはないのです。
植民地主義は、かなりの悪さをしたのですが、それだけに焦点を当てると、中央主義史観になってしまいます。辺境を歩き、こうした史観に修正を迫っていかなければならないのです。」(151-152)