2015-01-01から1年間の記事一覧

十二月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 12/4 『ウィーン物語』 宝木範義 12/6 『巴里の屋根の下』 ルネ・クレール 12/21 『しんきろうのみえる町』 伊藤真智子、 中村まさあき

1997年のきらめき

最近、久しぶりに原田知世さんの『ロマンス』という楽曲を聴いた。この作品は、1997年2月に発売されたアルバム『I could be free』から先行発売されたもので、発売直後から、よくラジオで流れていたのを覚えている。 当時私は16歳だったが、この曲が…

『レヴィ=ストロースとの対話』 ジョルジュ・シャルボニエ 2/4

・先ほど私が言及した芸術的生産の変貌が、文字をもった社会の中で起こったということは、おそらく偶然ではありますまい。――文字がルネサンスにとって新しい現象であったとは言いませんが、少なくとも新しかったのは印刷術の発明でした。すなわち、社会生活…

『レヴィ=ストロースとの対話』 ジョルジュ・シャルボニエ 1/4

200ページに満たない対談集だが、さすがはレヴィ・ストロース。この分量でも、様々な考えるきっかけやヒントを与えてくれる。 何回かに分けて、この対談で感銘をうけた発言、そこから考えたことを書きとめておく。 ・(民族学者は)肉体的に疲れる仕事で…

30年越しのマイアミ

『マイアミ午前5時』『セイシェルの夕日』...。1980年代初頭に、アイドルの松田聖子が発表した曲には、遠い国への憧れを抱かせるようなタイトルがついている。この曲を作るために、実際にマイアミやセイシェルに行く必要はない。写真や映画見た、異…

寂しい東南アジア

部屋の整理をしていたら、20歳前後のころ、東南アジアを旅したときに撮った写真が出てきた。懐かしいけど、どこか寂しい。 そのころは、バックパック旅行がブームで、東南アジアを旅する大学生が多かった。旅先として東南アジアを選ぶ理由を聞けば、「若いう…

十一月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 11/2 『吉田秀和作曲家論集〈1〉ブルックナー、マーラー』 吉田秀和(マーラー部分のみ) 11/18 『自由を我等に』 ルネ・クレール 11/19 『レヴィ=ストロースとの対話』 レヴィ・ストロース、 ジョルジュ・シャルボニエ 11/25 …

マーラー 交響曲第六番(バーンスタイン)

今年の春から、マーラーの交響曲を全作品聴く計画を立て、先週第十番まで聞き終わりました。今週からは、過去の作品の聞き直しを始めています。 今回は第六番を聞き直しました。 印象的なのは後半の二つの楽章。第三楽章では、木管楽器を使った五音音階的で…

『神話作用』 ロラン・バルト 2/2

本社の後半は、「今日における神話」として、前半の各論を踏まえた、総論的な内容となっている。 バルトの基本的な考えは、訳者による解説に以下の通り要約されている。 「言語の作用について、今日の言語学が、?意味するもの?(能記)と?意味されるもの?(…

『神話作用』 ロラン・バルト 1/2

本書の前半は、バルトが1954年〜56年に発表した、エッセイからの抜粋。 いずれも、現代文化批評の趣があり、たとえば分析対象をタレントやキャラクターに置き換えれば、今の日本でもバルトの考え方が適用できるくらいの普遍性はある。 ただし、現代日本にお…

十月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 10/2 『神話作用』 ロラン・バルト 10/13 『ヴェネツィア物語』 塩野七生、宮下規久朗

『ユング心理学入門』 河合隼雄 2/2

アニマ・アニムス 以前この本を読んだときは、このアニマ・アニムスの考えかたが面白く、日記にも引用していた。 ・原型として存在する根本態度について、外界に対するものをペルソナ、内界に対するものをアニマと呼ぶ。夢に現れた女性像を正確には、アニマ…

『ユング心理学入門』 河合隼雄 1/2

2007年の春に読んだ本の再読。以前読んだときに比べ、理解が胸に落ちる部分が大きいな、と感じる。著者の人間に対する洞察、完成のみずみずしさが、頭ではなく感覚的に味わえるようになってきている。自分の中で力んでいた部分が少しずつ抜けていき、柔…

九月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 9/14 『ユング心理学入門』 河合隼雄

『現代思想の冒険者たち バルト』 鈴木和成 2/2

・「文学」なき作家、という言葉によってバルトが言わんとするところは、文学が作家と一心同体であることをやめた、という意味である。……フロベールにとって写実主義の言語とは、「文学」という擬制、ブルジョワジーの専有物の汚染からまぬがれるための一つ…

『現代思想の冒険者たち バルト』 鈴木和成 1/2

著者の主張したい内容が、初読時に明確に分かるわけではなかったが、何度か読み返すうちに少しずつ理解できたような気分になる不思議な本だった。バルトの思想を紋切型に説明するのではなく、その魅力を複雑なまま伝えるには、この本のような書き方は誠実な…

八月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 8/11 『知っておきたい100の木―日本の暮らしを支える樹木たち』 田中潔 8/15 『バルト―テクストの快楽 現代思想の冒険者たち』 鈴木和成 8/16 『禁じられた遊び』 ルネ・クレマン 8/23 『名画への旅(12)絵の中の時間―17…

『ひらがな日本美術史4』『ひらがな日本美術史5』(再読) 橋本治

『ひらがな日本美術史6』を読んだことをきっかけとして、以前読んだ4巻、5巻を一部再読した。 俵屋宗達 私は宗達じゃないから、彼の頭の中なんかは分からないが、俵屋宗達という人は、数ある日本人画家の中で、最も明確に「龍」という生き物の形を説明出…

『ひらがな日本美術史6』 橋本治 2/2

小田野直武 司馬江漢の絵も、亜欧田田善の絵も、日本の洋風画の多くは、「遠くへの憧れ」を感じさせる、遠近感を強調させた風景画である。「洋風画を描く」ということは、「洋風画の原型が生まれた遠い国を思う」ということとも一つで、だからこそ、「遠くへ…

『ひらがな日本美術史6』 橋本治 1/2

葛飾北斎 北斎に、規制とか自制というものはない。管理社会の江戸時代の中にいるそういう人は、「近世的」ではないだろう。なぜかと言えば、彼は「近世」という時代と調和的ではないからだ。また、彼のいた江戸時代は、「近世」という時代区分の中に収まりな…

七月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 7/9 『ドビュッシーとの散歩』 青柳いずみこ 7/19 『服装で楽しむ源氏物語 』 近藤富枝

『ドビュッシー 想念のエクトプラズム』 青柳いずみこ

誤解された「印象主義」 ヤロチニスキによれば、音楽作品を聴きとるにあたって、「測定可能」なのは機能的な側面だけで、それが表象したり叙述したりするものは、さまざまな解釈が可能になってくる。音楽学者たちの興味は、もっぱらドビュッシーの作曲技法に…

『入門経済思想史 世俗の思想家たち』 ロバート・L・ハイルブローナー 2/2

ヴィクトリア朝の学者たち ヴィクトリア期の経済学の特徴―「均衡」などの静的な概念が台頭したこと。(287) ボブソンは、彼の帝国主義論で、資本主義がそのジレンマから逃れるための不断の趨勢として、不可避的に戦争が導かれることを主張した。それは、例え…

『入門経済思想史 世俗の思想家たち』 ロバート・L・ハイルブローナー 1/2

以前親しくしていた人と、最近偶然再会する機会があった。いろいろ話をしたが、そのなかで「アダム・スミスの『神の見えざる手』という表現が神秘的で好き」というような話になった。 それで、この500ページ以上もある経済史の本を読み直してみようと思うの…

六月に鑑賞した作品

今月は以下の作品を鑑賞した。 6/8 『入門経済思想史 世俗の思想家たち』 ロバート・L・ハイルブローナー 6/20 『パリジェンヌ』 ミシェル・ボワロン他 6/28 『ドビュッシー 想念のエクトプラズム』 青柳いづみこ

マーラー 交響曲第五番(バーンスタイン)

マーラーの交響曲の中でも、最も人気のある五番。私が唯一コンサートホールで聴いた、この作曲家の作品でもあります。 その時の目的は、有名なアダージェット。ただ、生で聴くのを非常に楽しみにしていたにもかかわらず、作品を聴き終わり高揚感を得るような…

マーラー 交響曲第三番(バーンスタイン)

2年近くに渡ったロマン派の作品鑑賞が終わり、今年の春からはマーラーの作品を聴いています。そして、20世紀になって全曲初演されたこの作品になって初めて、自分が持つイメージ通りのマーラー像が現れてきたような気がします。 交響曲第一番は、19世紀…

ムラヴィンスキーのチャイコフスキー(交響曲第六番)

ブラームスの第四番とともに、ロマン派の最後をかざる最高傑作。第一楽章のコーダを聴けば、誰しもチャイコフスキーの達観を感じるだろう。 しかし、この作品が発表された「時代」を考えてみると、また違った印象を覚える。 チャイコフスキーの最後の交響曲…

ムラヴィンスキーのチャイコフスキー(交響曲第五番)

この交響曲の魅力を一言でいえば、「中庸」ということになるだろうか。個性が強い四番や六番に比べ、落ち着いたところのある五番。ただし、演奏会で取り上げられる頻度が決して低くはないことからも分かるとおり、決して地味だったり、印象のうすい作品では…

『村上春樹 イエローページ1・2』 加藤典洋

前回この本を読んだのが2008年と2009年。約6年ぶりの読書となるが、この間2回転職したり、海外に引っ越したりした。そう考えると、6年という時間は、けっして短くは無いものだと思う。 - 再読するにあたり、「内閉」というテーマが常に頭の中にあった。『イ…