2011-01-01から1年間の記事一覧

十二月に鑑賞した作品

ブログに書いた作品のほか、今月は以下の作品を鑑賞した。 12/20 『神曲 天国編』 ダンテ神曲 天国篇 (河出文庫 タ 2-3)作者: ダンテ,平川祐弘出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2009/04/03メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 11回この商品を含むブログ …

『ヘーゲル・大人のなりかた』 西研

6年前に読んだ本の再読。 再び読もうと思ったきっかけは、今年の4月、NHKの番組での氏の発言からだった。 番組はニーチェの『ツァラトゥストラ』を紹介する内容であったが、その中の「超人」という概念について、氏は「超ポジティブ人間」、同じく出演してい…

旅をすること、拡張現実を観ること

確かに、すでに「外部」は存在しないかもしれない。しかし、「外部」のオルタナティブが、「いま、ここ」の多重化だけであるとは言えないだろう。 たとえば旅をするとき、小さな公園や寺院が、あるいは都市の裏通りや地方の商店街が、ふしぎな価値を帯びて、…

十一月に鑑賞した作品

ブログに書いた作品のほか、今月は以下の作品を鑑賞した。 11/5 『続ものぐさ精神分析』 岸田透 11/6 『悪人』 李相日 11/15 『ハイネ詩集』 11/17 コレクション名作展/メナード美術館 11/20 生誕100年 ジャクソン・ポロック展/愛知県美術館 『ヨーロッパ…

『リトル・ピープルの時代』 宇野常寛

2011/10/22鑑賞 ・リトル・ピープル=「歴史から切断された人々の、自らの人生を意味づけようとする欲望」。そして、村上春樹が「今、一番恐ろしいと思う」ものが、リトル・ピープルの及ぼすモーメント=「小さな物語」への依存=システムの生む「悪」となる…

一〇月に鑑賞した作品

ブログに書いた作品のほか、今月は以下の作品を鑑賞した。 10/3 『日本美術の歴史』 辻惟雄 10/30 島田章三展 愛知県美術館日本美術の歴史作者: 辻惟雄出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2005/12/09メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 30回この商品…

『吉原炎上』 五社英雄

2011/10/23鑑賞 既に何度も再放送されているこの作品。全編通して見たのは、今回が初めてである。 舞台は明治末期であるが、1987年の映画ということで、当時の風潮を色濃く受けている。例えば「金がすべて」「世の中は嘘のかたまり」といったたぐいの台詞は…

『ハルキ・ムラカミと言葉の音楽』 ジェイ・ルービン

2011/9/16読了 村上は第一作を全部「理解」して書いていたわけではなかったにせよ、自分がしていることはわかっていた。心の中にある「もうひとつの世界」から不意に浮上してくる、うろ覚えの記憶やわかりかけていたイメージの中で探索をしているのだ。……合…

八月に鑑賞した作品

ブログに書いた作品のほか、今月は以下の作品を鑑賞した。 8/2 『和声と楽式のアナリーゼ』 島岡譲 棟方志功 祈りと旅 愛知県美術館 土着的な力強さのある作品のほか、手仕事的な小品など 8/4 『白鳥の湖』 ミラノ・スカラ座バレエ団 8/5 『ドン・キホーテの…

『ラヴェル:ピアノ作品集』 ロジェ

2001年の7月に、渋谷のタワーレコードでこのアルバムを買ってから、もう10年がたつ。当時ラヴェルといえば、『ボレロ』の作曲者や『展覧会の絵』の編曲者としてしか知らず、なぜピアノ曲集を買ったかといえば、ショパンのピアノ作品集を集めていた、その流れ…

『エセー』 モンテーニュ

2011/7/16読了 ・暇は、いつだって精神を移り気にする。心は無秩序にあばれまわり、たくさんの風変わりなまぼろしや化け物を生み出すことになる。 ・自分だけで精神をぐったり、働かせるより、偶然により、ふとした機会や、人々といっしょにいる場合とかに、…

七月に鑑賞した作品

ブログに書いた作品のほか、今月は以下の作品を鑑賞した。 7/6 『戦争と平和』(再観) セルゲイ・ボンダルチュク 7/11 『にごりえ』 今井正 『ラヴェル (作曲家別名曲解説ライブラリー)』 7/13 『ダークナイト』 クリストファー・ノーラン 7/18 『ボスタ! …

『仮面の告白』 三島由紀夫

2011/7/3読了 しかし困ったことに私の直感が園子の中にだけは別のものを認めさせるのだった。それは私が園子に値いしないという深い虔ましい感情であり、それでいて卑屈な劣等感ではないのだった。一瞬毎に私へ近づいてくる園子を見ていたとき、居たたまれな…

『ブラームス:ヴァイオリン協奏曲』 オイストラフ、クリーヴランド管弦楽団

「この音楽には、ベートーヴェンにはなかった一種の郷愁の味わいがある。一抹の憂いを帯びた味わいがある。それは、このあとになってもぬけない。いや、それどころか、あんなにおちついた、のびのびとした拡がりのように思われたものが、いつのまにか省察と…

『ドビュッシー:前奏曲集』 ベロフ

ドビュッシー晩年のピアノ作品集である。かつて「亜麻色の髪の乙女」など有名な幾曲かを聴いたことはあったが、改めて全曲を聴くことでまた異なった印象となった。 何よりも強く感じることは、曲による表現技法の幅広さである。増5度や9度の音を多用した和声…

『ハイドン:弦楽四重奏曲 作品64-5』 スメタナ四重奏団

まさに古典派、まさに中庸。完璧な構成の中に育ちの良さを感じさせるこの作品には、仰々しい感情の動きは存在せず、どこまでの明るく、軽やかだ。 「そのかわり、感傷はない。べとついたり、しめっぽい述懐はない。自分の悲しみに自分から溺れていったり、そ…

六月に鑑賞した作品

ブログに書いた作品のほか、今月は以下の作品を鑑賞した。 6/4 『さらば箱船』 寺山修司 『リルケ詩集』 6/8 『完全な遊戯』 舛田利雄 6/11 『荻須高徳展 憧れのパリ・煌めきのベネチア』 松坂屋美術館 6/25 『ラヴェルのピアノ曲』 エレーヌ ジュルダン‐モ…

『THE CHET BAKER QUARTET WITH RUSS FREEMAN』 

ウエストコースト・ジャズを代表するひとりである、チェット・ベイカーのこのアルバムは、いわゆる超絶技巧や作曲の斬新さを見せつける作品ではない。むしろ純粋にスイングに身をゆだねられる心地よさをもっており、晩春や初夏のような季節には何度でも聴き…

『斜線の旅』 管啓次郎

2011/5/28読了 ところが、たとえばオーストラリアを知りエミリーの絵画を知ることに、どんな意味があるのか、何の役に立つのかと疑問を抱く人もいる。「美術って何か役に立つんですかあ」と何の屈託もなく口走る学生たちには、いまも毎年直面する。何度でも…

『1Q84 Book3』 村上春樹

2011/5/13読了 村上氏がその作品のなかで、継続して描いてきたものとして、「現実との対峙」があると思う。本作をその視点で見ると、過去の作品からつぎのような流れが見て取れるだろう。 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』では、現実は拒否さ…

『シューベルト:ピアノ・ソナタ第14番』 内田光子

シューベルトはロマン派の嚆矢といわれる作曲家である。このピアノ・ソナタを聴けばその理由が分かる。古典派の均整のなかから、ロマン派的な感情の揺らぎが生まれる過程が見て取れるだろう。 第一楽章、最初の主題は短調で始まる。しっかりと構成された古典…

五月に鑑賞した作品

ブログに書いた作品のほか、今月は以下の作品を鑑賞した。 5/1 ジム・ダイン―主題と変奏:版画制作の半世紀 名古屋ボストン美術館 5/2 『八月の狂詩曲』 黒澤明 5/3 『書を捨てよ町へ出よう』 寺山修司 5/4 『ミスター・ミセス・ミス・ロンリー』 神代辰巳 …

『ひこうき雲』 松任谷由実

震災の後何度も、ラジオからこの曲が流れていた。その当時の空気、気分と一致するところがあり、2011年の春に初めて、松任谷由実の作品を購入することとなった。 作品全体は、都会的で内省的な印象がある。アレンジはやや時代がかったものがあるが、それでも…

『新・建築入門』 隈研吾

2011/4/17読了 ・建築と空間の断絶――何かを構築しようとする、主体の意志。 ・「すべての構築に構造がある」のではなく、すべての構築が構造を欲し、結果として構造を表現する。 ・ただし、構築には主体が必要。「ピュタゴラス的な理想主義は視覚をもった主…

『イタリア紀行(上)』 ゲーテ

2011/4/29読了 今でさえもう自分で身辺の用を足し、いつも注意をし、いつも気を配っていなければならないということが、この数日来私にまったく別種の精神的弾力を与えてくれる。以前はただ考えたり、望んだり、企てたり、命じたり、口授したりするだけだっ…

四月に鑑賞した作品

ブログに書いた作品のほか、今月は以下の作品を鑑賞した。 4/1 『暴力脱獄』 スチュアート・ローゼンバーグ 4/2 没後120年 ゴッホ展 名古屋市美術館 4/4 『ダーティ・ダンシング』(途中まで) エミール・アルドリーノ 4/6 『フラッシュダンス』(途中まで)…

『ヴァインランド』 ピンチョン

2011/3/31途中まで読了 アメリカの60年代〜80年代のサブカルチャー、ポップカルチャーの要素を織りまぜながら、「経営状態がいかがわしいカフーナ航空のエンターテイメント飛行機が、UFOもどきに襲われる」ようなエピソードや、「東洋思想を取り入れた自己啓…

『アフターダーク』 村上春樹

2011/3/22読了 いずれにせよ、夜のうちにその部屋の中で起こった一連の奇妙な出来事は、もう完全に終結してしまったように見える。ひととおりの循環が成し遂げられ、異変は残らず回収され、困惑には覆いがかけられ、ものごとは元通りの状態に復したように見…

三月に鑑賞した作品

ブログに書いた作品のほか、今月は以下の作品を鑑賞した。 3/3 『帰郷』 ハル・アシュビー 3/5 尾張徳川家の雛まつり 徳川美術館 3/6 現代能楽集?『「春独丸」「俊寛さん」「愛の鼓動」』 『星三百六十五夜 冬』 野尻 抱影 3/9 『フォッグ・オブ・ウォー マ…

『永遠平和のために 他』 イマヌエル・カント

2011/3/5読了 各論文で主張される内容は次の通り。 「啓蒙とは何か」 ・啓蒙は「人間が、みずから招いた未成年の状態から抜けでること。未成年の状態とは、他人の指示を仰がなければ自分の理性を使うことができないことである。(10) ・人間性の根本的な規定…