2019-01-01から1年間の記事一覧

十二月に鑑賞した作品

12/12 『仏教入門』 松尾剛次 12/13 『ゴドーを待ちながら/エンドゲーム』 サミュエル・ベケット 12/14 カラヴァッジョ展/名古屋市美術館 12/30 『大乗仏教―ブッダの教えはどこへ向かうのか』 佐々木閑

十一月に鑑賞した作品

11/1 第71回正倉院展/奈良国立博物館 11/3 百々新「WHITE MAP -On the Silk Road-」展 入江泰吉「道」展 /入江泰吉記念奈良市写真美術館 上村松園・松篁展/松柏美術館 11/9 『絵本 徒然草 上』 橋本治 11/12 『男はつらいよ 寅次郎紅の花』 山田洋次 11…

十月に鑑賞した作品

10/3 『男はつらいよ 拝啓 車寅次郎様』 山田洋次 10/13 『現代アートとは何か』 小崎哲哉 ~10/14 あいちトリエンナーレ2019 10/30 『和泉式部日記』 いがらしゆみこ

『日本の橋』 保田與重郎 2/2

「日本の橋」でも、著者は知識や理屈ではなく、情感に重きを置いている。 日本の橋は材料を以て築かれたものではなく、組み立てられたものであった。原始の岩橋の歌さへ、きのふまでこゝをとび越えていった美しい若い女の思い出のために、文字の上に残された…

『日本の橋』 保田與重郎 1/2

新学社から出ている『改版 日本の橋』から「誰ヶ袖屏風」「日本の橋」を読んだ。 「誰ヶ袖屏風」では、秀吉の時代と永徳の才能によりはじまった桃山文化が、宗達に結実する様を述べる。 光悦宗達はその文様風絵画の早い先駆であった。その先駆というよりも、…

『グリーンバーグ批評選集』 4/4

現代における絵画の質とは 絵画芸術にとって削減しえないものとは、ただ二つ、平面性とその平面性の限界づけである。言い換えれば、これら発った二つの基準に従えば、絵画として経験され得る物体を創造するには充分なのだ。 今、芸術において価値もしくは質…

『グリーンバーグ批評選集』 3/4

白黒の絵画 抽象表現主義者が描いた白黒の絵画と、中国や日本の書との類似は、単なる近似現象、偶然の結果に過ぎない。西洋絵画にとって明度対比、色彩の明と暗との対立は、自らを他の絵画芸術の伝統から区別する三次元イリュージョンの主要な手段であり、そ…

『グリーンバーグ批評選集』 2/4

モダニズム絵画が目指したもの モダニズムの本質とは、ある規律そのものを批判するために、その規律に独自の方法を用いることである。それは芸術で言えば、別の芸術のミディアムと共用している効果をことごとく除去すること(=自己-批判)となる。 たとえば…

『グリーンバーグ批評選集』 1/4

アヴァンギャルドと抽象 アヴァンギャルドが「抽象」あるいは「非具象」の芸術に到達したのは、絶対の探求においてであった。……そこで芸術家が模倣しているのは神ではなくて、芸術や文学そのものの規律と過程であることが分かる。これが「抽象」の起源なので…

九月に鑑賞した作品

9/4 『男はつらいよ 寅次郎の休日』 山田洋次 9/10 『男はつらいよ 寅次郎の告白』 山田洋次 9/17 『男はつらいよ 寅次郎の青春』 山田洋次 9/19 『崖の上のポニョ』 宮崎駿 9/21 『天気の子』 新海誠 9/25 『寅次郎の縁談』 山田洋次

『近代世界システム論講義』 川北稔 2/2

・ポルトガル人がアジアに進出したころ、すでにアジア内には広域商業ネットワークがいくつか存在した。またそれらは奢侈品だけでなく、生活必需品も交易対象としており、例えば香料の完全なモノカルチャー地域となっていたバンダ諸島は、食料の外部からの補…

『近代世界システム論講義』 川北稔 1/2

ずっと興味があった「近代世界システム」という概念。時間的にウォーラーステインの著作を読むことは難しいが、川北氏によるこの解説本だけでも、ある程度の考え方は理解できる。 たとえば、米国のトランプ大統領の政策は、世界システム論的に言えば、分業体…

八月に鑑賞した作品

8/2 『ライオン・キング』 ロジャー・アラーズ ロブ・ミンコフ 8/9 マリアノ・フォルチュニ 織りなすデザイン展/三菱一号館美術館 8/15 『世界システム論講義: ヨーロッパと近代世界』 川北稔 『ジュエリーの世界史』 山口遼 8/16 『男はつらいよ 寅次郎サ…

七月に鑑賞した作品

7/2 『男はつらいよ 寅次郎恋愛塾』 山田洋次 7/9 『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』 山田洋次 7/11 『イースター・パレード』 チャールズ・ウォルターズ 7/16 『男はつらいよ 幸福の青い鳥』 山田洋次 7/18 『スイング・ホテル』 マーク・サンドリッチ 7…

『小鳥たちのために』 ジョン=ケージ 3/3

・(クリスチャン・ウォルフの音楽は)どうしても演奏されなければならない音があるとしても、それ以外の音については、他の音がその音に取って替わることができるでしょう。ところがシュトックハウゼンにおいては、これらすべてのことが闘争というプランの…

『小鳥たちのために』 ジョン=ケージ 2/3

・(生活としての芸術とは)<芸術としての生活>を望むとしたら、私は唯美主義に陥ってしまうかもしれませんね。なぜなら私がなにかを、生活に関するある観念を押しつけたがっているように見えるでしょうから。音楽は――少なくとも私が考えているような音楽…

『小鳥たちのために』 ジョン=ケージ 1/3

今年の春から夏にかけて読んだジョン=ケージの対談集。 統一だてられた主張が声高に語られるわけではないが、ケージの言葉ひとつひとつから、なんとなく彼の思想の全体が分かって来る、そのような不思議な本だった。 以下、考えたことをつらつらと。 偶然、…

六月に鑑賞した作品

6/1 『名画への旅(21) 世紀末の夢―19世紀5』 6/4 『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』 山田洋次 6/6 『トップハット』 マーク・サンドリッチ 6/9 『まんがで読む 古事記』 6/12 『男はつらいよ 旅と女と寅次郎』 山田洋次 6/15 『男はつらいよ 口笛を吹…

五月に鑑賞した作品

5/6 横尾忠則 大公開制作劇場 〜本日、美術館で事件を起こす/横尾忠則現代美術館 伝説のファッションデザイナー 鳥丸軍雪展/神戸ファッション美術館 5/12 『劇場版名探偵コナン ゼロの執行人』 立川譲 5/14 『男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎』 山田洋次 5/…

四月に鑑賞した作品

4/3 『男はつらいよ 寅次郎春の夢』 山田洋次 4/6 『平成狸合戦ぽんぽこ』 高畑勲 4/7 『桜の園・三人姉妹』 チェーホフ 4/9 『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』 山田洋次 4/12 『スワンの恋』 フォルカー・シュレンドルフ 4/16 『男はつらいよ 寅次郎…

『桜の園・三人姉妹』 チェーホフ

ラネーフスカヤ 「真実をねえ? そりゃあなたなら、どれが真実でどれがウソか、はっきり見えるでしょうけれど、わたし、なんだか目が霞んでしまったみたいで、何一つ見えないの。あなたはどんな重大な問題でも、勇敢にズバリと決めてしまいなさるけど、でも…

三月に鑑賞した作品

3/5 『男はつらいよ 寅次郎頑張れ! 』 山田洋次 3/7 『サンセット大通り』 ビリー・ワイルダー 3/12 『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』 山田洋次 3/14 『ALWAYS 三丁目の夕日』 山崎貴 3/19 『男はつらいよ 噂の寅次郎』 山田洋次 3/21 『今昔物語 ―マン…

『ルネッサンスの光と闇 芸術と精神風土』 高階秀爾 

ルネッサンスの芸術作品を、その根底にある思想、すなわちネオ・プラトニズムとの関連から解き明かしている。ルネッサンス芸術に関しては、歴史背景や人物からその芸術作品を論じたものは多いが、ネオ・プラトニズムとの関係を扱った内容は意外と少なく、と…

『吉田秀和全集3 二十世紀の音楽』4/4

第二部は、二十世紀半ばにおける、クラシック音楽をめぐる概観とでもいうべきもの。自分が付箋をつけた個所には、以下の内容が述べられていた。 十五年後に書かれた第一部に比べ、ややポジティブな結論となっている。この十五年の間に、氏の考え方やあるいは…

『吉田秀和全集3 二十世紀の音楽』3/4

『現代音楽を考える』 これらの悲観的な視点を展開した後、吉田氏は図形楽譜やアドルノの音楽評論について意見を述べる。 「図形楽譜」 全面的セリーの音楽は、「数」の関係、数式的な思慮と関係づけられていたのに対し、図形楽譜の場合は、「ものの姿」、視…

『吉田秀和全集3 二十世紀の音楽』2/4

『現代音楽を考える』 各作曲家論か続いた後は、これを踏まえたうえでの総論が続く。ここで、吉田氏はかなりペシミスティックな論を展開する。 「近代音楽の終焉」 そこに「理性と論理」の黙殺を見ないとしても、「力と意思」への冷たい拒否を感じないのは、…

『吉田秀和全集3 二十世紀の音楽』1/4

この本は、三部分から構成されている。第一部として、昭和四十七年から四十八年まで『芸術新潮』に連載されたものをまとめた、『現代音楽を考える』。 第二部は、昭和三十二年に岩波新書の一冊として刊行された『二十世紀の音楽』。 第三部は、現代音楽につ…

二月に鑑賞した作品

2/2 『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』 山田洋次 2/3 『ルネサンスの光と闇』 高階秀爾 2/7 『男はつらいよ 葛飾立志篇』 山田洋次 2/9 『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』 山田洋次 2/13 『オール・ユー・ニード・イズ・キル』 ダグ・ライマン 2/15 『0課…

こころへのセンサーを研ぎ澄ませる 『失われた時を求めて12 消え去ったアルベルチーヌ』 4/4

『失われた時を求めて』は「意識の流れ」を表現したと言われる作品だけあって、こころの動きにかかわる微妙な表現には、何度もはっとさせられる。 物語の本筋からはずれるが、次に引用するような表現は、なかなかお目にかかれるものではない。 私が自分に発…

想いの消えゆく過程を記録する 『失われた時を求めて12 消え去ったアルベルチーヌ』 3/4

ここまでであれば『消え去ったアルベルチーヌ』は、ただの恋愛心理小説の名作に過ぎないかも知れない。しかし、小説の後半、物語は別の様相を帯びる。主人公のアルベルチーヌに対する想いは消えはじめ、小説は科学の観察のように、その過程をまた三百ページ…