『日常生活における自己呈示』 アーヴィング・ゴフマン 4/7

第3章 領域とそこでの行動

もっと重要なのは、状況の定義はふつうインフォーマルとフォーマルの二つの様式の一方に向かいがちではあるが、しかし個別の具体的な状況が、インフォーマルな行動やフォーマルな行動の純粋な事例を提供すると期待すべきではないということである。あるショーにおけるチーム仲間は、ある程度まで別のショーでのパフォーマンスとオーディエンスであるだろうし、そしてあるショーにおけるパフォーマーとオーディエンスは、別のショーではそれがかりそめのものであれチーム仲間になることもある。だから私たちは、そうした純粋な事例を目にすることはない。したがって、個別の具体的な状況のなかでは、私たちはどちらかの様式が優勢になることを予期しながら、同時に、二つの様式の実際の組み合わせや両者間に達成されているバランスをめぐって、ある程度の罪悪感もしくは疑わしさを覚えるだろう。(203)
パフォーマンスの呈示にあたって協力しあう人たちは、オーディエンスがいないときには相互に気の置けなさを表出しあうだろうと言うときに、しかし、人が表領域での活動(および表領域での役割)に習熟しすぎて、自分がくつろいでいる状態を一つのパフォーマンスとして取り扱わなければならなくなってしまうことがあるのを念頭に置いておかなければならない。人は舞台裏にいるときに、気の置けないやり方で役割から外れた行動をすることを義務付けられていると感じるかもしれない。その時そうした行動は、くつろぎを提供しようとするパフォーマンスというより、見せかけのポーズになってしまっている可能性がある。(211)