2006-01-01から1年間の記事一覧

第九交響曲物語〜ベートーベン 自由への祈り〜(BS世界のドキュメンタリー)

2006/12/29鑑賞 ベートーベン「第九」が世界でどのように受容されてきたかを追った番組。 19世紀から傑作としてヨーロッパ中に広がり、20世紀になるとソヴィエトは「インターナショナル」に継ぐ第二の国家として、アメリカは民主主義の象徴として、フランス…

アジアに生きる子供たち(BSドキュメンタリー)

2006/12/26鑑賞 「祖国を見つめて ロシア沿海州 高麗人少女のひと夏」 「尼寺で育つ7人の少女〜中国 福建省〜」 クリスマス・イブに放送された、世界の子供たちの今を見つめたドキュメンタリー番組。この二つの番組では、共に社会の中でストレンジャーとし…

ゴッドファーザーパートⅡ・Ⅲ/コッポラ

2006/12/21,24鑑賞 マイケルがファミリーのドンとなってからの、その後を描いた物語。パートⅢで、マイケルがコニーに対し、大司教に罪を告白したことを伝えた時の「何かが変ったよ」と言う台詞、そしてマッシモ劇場の大階段で、娘が目の前で射殺された時のマ…

ホメロスを楽しむために/阿刀田高

2006/12/23読了 「人間達は悩み、問いかけ、祈り、そして努力をする。計り知れない神の意志に翻弄されながら、どのようにして自分の、人間としての倫理を確立するか。避けることのできない死をどう迎えるか。二つの叙事詩には、神々の気紛れにもまれながら葛…

滞欧日記/澁澤龍彦

2006/12/23読了 「スペインへ来て気がついたこと。方輪者、めくら、足なえ、いざり等多し。道ばたに立っている。新聞売り。 乞食。押売り。客引き」(81) 「たしかにヴェニスは、安ピカ物の古びた、大時代的な感じの町である。骨董屋多し。何軒か、ひやかして…

ゴッドファーザー/コッポラ

2006/12/14鑑賞(再観) シチリア出身のマフィアの生態を描いた、お馴染みの映画。6年ぶりに見たが、最初に見た時とは感じるものが全く違った。(と言うより、内容を全く覚えていなかった) 印象的だったのは物語り中盤に出てくるシチリアの風景。崩れかけた建物…

「死の棘」/鐘下辰男演出

2006/12/7鑑賞 原作者・島尾敏雄とその妻ミホの夫婦生活の危機を描いた私小説的作品。お互いに罵り合い、自殺しようとする相手を見ては止めに入る、そのような描写の繰り返し。敏雄の独白部分を三人の別の役者が演じているのが面白い。

ナボコフ自伝/ナボコフ

2006/12/6読了 「それから四分の一世紀後に私はふたつのことを知った。ひとつは、そのころはもうなくなられた後だったが、バーネス先生がロシア詩の博学な翻訳者として実は非常な高名な方だったということで、ひとつは、大叔父や年とった下僕たちと同じくら…

復興期の精神/花田清輝

2006/12/2読了 「率直にいえば、私はコペルニクスの抑制を、彼の満々たる闘志のあらわれだと思うのだ。かれのおとなしさは、いわば筋金いりのおとなしさであり、そのおだやかな外貌は、氷のようにつめたい激情を、うちに潜めていたと思うのだ。そうして、闘…

ルートヴィヒ/ヴィスコンティ

2006/12/2鑑賞 バエイルン国王ルートヴィヒ2世の生涯を描いた物語。まず、美術が圧倒的。ノイシュヴァンシュタイン城の地下の泉に、ルートヴィヒが船に乗って登場してくるシーンが特に美しかった。また、ルートヴィヒが同性愛的な傾向があったことは新たな発…

「旅する哲学」/アラン・ド・ボトン

2006/11/29読了 「わたしは片隅に坐ったまま、チョコレート・フィンガーを食べ、ときどきオレンジ・ジュースを飲む。私は孤独だったが、このときだけは、穏やかな、心地よくさえある孤独だった。それというのも、笑いと友情の背景に溶け込もうとしたら、私の…

夢の宇宙史/澁澤龍彦

2006/11/28読了 「機械は、少なくとも新時代の発端においては、自然の活動する生き生きした姿に対抗し得るような、自立的な精神世界が存在しうるということの証拠であり、矛盾に満ちた生のままの自然現象よりも、はるかに分別があり、合理的に身を処すること…

白夜/ヴィスコンティ

2006/11/22鑑賞(再観) イタリア北部の小さな町が舞台。橋の上で知り合った女に恋する男の悲恋の物語。ラストの町が雪に包まれる中での別れのシーンが印象的。 「僕は生まれ変わった。前とは違う人間だ。説明できないけど自分で分かるのさ。この町が陰気に見…

夏の嵐/ヴィスコンティ

2006/11/21鑑賞 19世紀、オーストリア占領下のヴェネチアで、一人の将校に恋した女性の物語。美しい絢爛なセット、リアリティのある街並の風景が非常に印象的な作品だった。

黒衣の花嫁/トリュフォー

2006/11/15鑑賞 結婚式当日に事故によって夫を殺されたジュリー・コレールは、加害者となった男たちを見つけ出し次々に殺していく。殺す前に加害者に恋心を抱かせているところが面白い。物語の最後に獄中で最後の加害者を殺した直後、メンデルスゾーンの『結…

北回帰線/ミラー

2006/11/12中断 古典の新訳ということで読んでみた。文章自体は読みやすく内容も理解は出来るのだが、突っぱねられるような印象を受け読むのを止めてしまった。中上健次やサドを読んだ時にも似た経験がある。AMAZONのレビューでは中上健次の作品と共にこの本…

ものぐさ精神分析/岸田透

2006/11/11読了 「和魂洋才とは外面と内面とを使いわけるということである。(中略)ある危機的状況にあって、外面と内面との使いわけというこの防衛機能を用いることが、精神の分裂をもたらすのである。」(19) 「人格の統一性の裏づけを欠いた精神分裂病的な…

獣人/ゾラ

2006/11/5読了 「自分でも奇妙に思われるのは、この砂漠のような奥まった片隅で途方に暮れ、胸の内を打ち明けられる相手もだれもなく暮らしているのに、昼も夜もひっきりなしに多くの男たち女たちが、嵐のように襲ってくる列車に乗って、家を揺すぶり、全速…

恋のエチュード/トリュフォー

フランス人クロードはイギリス人アンとミュリエルの姉妹に出会い、共に暮らすことになる。彼は姉アンの計らいからミュリエルと婚約するが、結婚まで分かれて生活している内にアンと恋に落ちる。しかし、二人の仲はミュリエルの知るところとなり、恋は破局す…

信仰が人を殺すとき/クラカワー

2006/10/27読了 以前『週間ブックレビュー』で都築響一氏がこの本を紹介していた。その際、日本の地方に行くと、今でもこの本に書いてあるような不条理なことがある、と述べていた。私自身、都市に住んでいると見えにくい地方性・土着性に関心があり、この本…

酒神・ディオニュソス/鈴木忠志演出

2006/10/15鑑賞(再観) 異国の神ディオニュソスを軽んじた結果、没落させられるテーバイの王家を描いた物語。 テーバイの王ペンテウスは女性信者たちをトランス状態に陥れるディオニュソスをいかがわしく思い、信女達を捕らえようとする。しかし、その場に着…

秘密結社の手帖/澁澤龍彦

2006/10/13読了 「あらゆる時代に、儀式の秘密を所有することによって、俗世間の人間のあいだから自分を区別しようと努力した人たちがいたのである。そういう人たちが集まって、小さな集団をつくる。その方法は様々に違っていても、この秘密に一つの制度とし…

ナボコフ短編全集Ⅱ/ナボコフ

2006/9/27読了ナボコフ後期短編の集成。 ストーリー展開についていくのが難しい作品も多かったが、作品中の言葉には、はっとさせられるものがあった。印象に残っている短編を2つ。