近親愛について
ちなみに、この小説を一部で有名にした「近親愛」は、たとえば次のように表現されている。ここからもわかる通り、二人の行為は、読者の様々な想像力に開かれているものである。
だがすべての感情と同様、愛においても、行為による実現から遠く離れれば離れるほど、その灼熱の炎は言葉の中でより大きく燃え広がるのである。そして最初に起こった、心を激しく揺さぶるあの捉えどころのない体験のあとで、兄妹がひたすら会話に身を任せ、ときおり魔法にかけられたような気分に浸っていたのは、まず第一にどのように行為していいかわからないからだった。その原因でもある自分自身への感情の恐れと、殻を破ってその感情を見極めたいという好奇心がせめぎあっていたため、内容的には深みに達しているのに、ときとしてふたりの会話は表層にとどまらざるをえなかった。(643)
