新しい都市風俗の幕開け
次の引用は、都市風俗小説として、世俗化していく社会を見事に表現した一文。小説が発表されたのは一八七三年だが、「二十世紀」という言葉がさりげなく、ただし強い印象を持って記されている。
「僕はね、サン=トゥスターシュ教会のバラ窓が、あんな風に中央市場のど真ん中にはめこまれることになったのは、けっして建築上の必要からだけではなかったと思うんだ。いいかい、そこにはひとつの宣言のようなものが丸ごと籠められている。つまりあれが現代芸術なんだ、写実主義なんだ、自然主義なんだ。まあ、どう呼んでもいいけれど、それが古い芸術の目の前でどんどん大きくなってゆく……きみはそう思わないかい?」
フロランが黙っているので、彼(クロード)はつづけた。
「おまけにあの教会は折衷式の教会だ。死にかかった中世と、まだ片言のルネサンスとのね……今の時代はいったいどんな教会をたてているか、気がついているかい?あらゆるものに似せて作っているんだ。図書館でも、天文台でも、鳩小屋でも、兵営でも、何でもお望みのものにね。でもひとつだけ確かなことは、そのなかに神様がいらっしゃるなんて、誰も信じちゃいないってことさ。昔の敬虔な石工は滅びてしまったんだ。だとすれば、誰も住まないあんな醜い石の残骸なんかもう建てないことこそが、いちばんの知恵ってもんじゃないか……この世紀が始まって以来、人々が建てたオリジナルな建造物といえば、たったひとつだけだ。何のお手本もなしに、この時代の土のうえに自然に生え出たかのような大建築、それが中央市場なんだよ。わかるかいフロラン。あれは勇ましい作品だ。だがそれでもまだ、二十世紀を臆病に告げているに過ぎない……」(291-292)

