『永遠平和のために 他』 イマヌエル・カント

2011/3/5読了
各論文で主張される内容は次の通り。

「啓蒙とは何か」

・啓蒙は「人間が、みずから招いた未成年の状態から抜けでること。未成年の状態とは、他人の指示を仰がなければ自分の理性を使うことができないことである。(10)
人間性の根本的な規定は、啓蒙を進めることである。そのため、次の世代の認識の拡張、啓蒙の推進を禁じるような契約は、人間性に対する犯罪である。(19-20)

世界市民という視点からみた普遍史の概念」

・自然は人間に対し「動物としてのありかたを定める生物学的な配置に含まれないすべてのものをみずから作りだすこと」「本能とかかわりなく、みずからの理性によって獲得できる幸福や完璧さだけを目指すこと」を望む。これが、幾世代もつづく人間の営みの目的である。(36-38)
・自然は諸国家の敵対、それにともなう荒廃、政府の転覆、国力の消耗を経験させた後、国際的な連合の設立を実現させる。この連合においては、自国の威力や法的判断によらず、連合した力と連合した意思が定めた法の決定の力によって、自国の治安を維持し、権力を保持することができる。(48-49)

「人類の歴史の憶測的な起源」

・創世記に描かれた事象を、歴史哲学の視点から読み直した内容。そのうえで、人類の目的としての「進化」の必要性を説いている。

「永遠平和のために――哲学的な草案」

・人間たちの永遠平和は自然状態ではない。自然状態はむしろ戦争状態である。平和状態は新たに創出すべきものである。(162-163)
国際法の理念は国家により異なる。そのため、実現が困難となる「一つの世界共和国」という積極的な理念の代用として、「たえず拡大しつづける持続的な連合」という消極的な理念が必要となる。この連合が戦争を防ぎ、法を嫌う好戦的な傾向の流れを抑制するのである。(182-184)
・国家は哲学者たちに、戦争の遂行と平和の樹立にかんする普遍的な原則について、自由かつ公に論じさせる。法律家は哲学者たちの示す原則を優先する必要はないが、その言葉には耳を傾けなければならない。(211-213)
・すべての法的な要求は公開性という性質をそなえている必要がある。「他者の権利にかかわる行動の原則が、公開するにはふさわしくない場合には、その行動はつねに不正である」(240-242)
国際法が可能であるためには、まず法的な状態が存在していなければならない。そして、戦争の防止だけを目的として諸国家が連合することが、諸国家の自由を妨げることのない唯一の法的な状態である。だから政治と道徳が合致するためには、連合的な組織が必要なのである。(248-250)

永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫)

永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫)