2011-01-01から1年間の記事一覧

ウジュンパンダンの夜

今年の冬に読んだ三島由紀夫氏の『アポロの杯』に、半世紀前のリオデジャネイロの様子を伝える、次のような文章があった。 「道は丘の頂きへ向って螺旋形にのぼってゆく。踊りの群はわずかずつそれを登ってゆくのでいつ果てるとも知れない。夜は暑かった。人…

カンディンスキーと青騎士展/愛知県美術館

2011/2/25鑑賞 カンディンスキーとその周辺人物の作品を紹介した作品展であるが、時代により、彼が様々な表現を試みていたこと、それらから同時代の他派の影響を読みとれたのは収穫であった。 たとえば初期の≪花嫁≫を描いたころ(1901〜1907年)の作品には、…

『クォンタム・ファミリーズ』 東浩紀

2011/2/12読了 ここ数年、この本の著者の発言や著述を見てきたが、数年来考えられてきた内容が結実された作品であると思えた。それらは「別のようでありえた未来」や「近未来予想」や「郊外の変容・ショッピングモールの描写」や「思想界、ネット論壇の戯画…

二月に鑑賞した作品

ブログに書いた作品のほか、今月は以下の作品を鑑賞した。 2/10 『北欧神話』 パードリック・コラム 2/12 『愛と哀しみの果て』 シドニー・ポラック 2/17 『ブルードラゴン』 ロベール・ルパージュ 2/24 『真夜中のカーボーイ』 ジョン・シュレシンジャー 2/…

『グレート・ギャツビー』 フィッツジェラルド

2011/2/3読了 ギャツビーのところに行って別れの挨拶をしたとき、彼の顔に困惑の色が戻っていることが見て取れた。今ここにある幸福をそのまま真に受けていいものか、微かな疑念が生じたらしい。なにしろ五年近くの歳月が経過しているのだ!デイジーが彼の夢…

一月に鑑賞した作品

ブログに書いた作品のほか、今月は以下の作品を鑑賞した。 1/5 『地下室のメロディー』 アンリ・ヴェルヌイユ 『神の子どもたちはみな踊る』 村上春樹 1/7 『疑惑の影』 アルフレッド・ヒッチコック 1/10 『新星座巡礼』 野尻抱影 1/11 『シシリアン』 アン…

『白夜』 ドストエフスキー

2011/1/10読了(再読) 頭の中だけで恋愛をする人間の気持ち悪さが描写されている、と言われる本書である。再読して見ると、恋愛の独り相撲ぶりよりは、むしろその切実さが目につき、単純に主人公を笑い飛ばすことはできない気分になる。しかし、主人公の気…

『漱石文明論集』 三好行雄編

2011/1/9読了 年始に久しぶりに漱石が読みたくなり、この本を手に取った。内容も文体も、正月に読むにふさわしいものである。 現代日本の開化 現代日本が置かれたる特集の状況に因ってわれわれの開化が機械的に変化を余儀なくされたるためにただ上皮を滑って…

『転がる香港に苔は生えない』 星野博美

2010/12/30読了 10年近く前に「話題の本」として、多くの本屋で平積みにされていた本であったと思う。当時、気になってはいたが読まずじまいであり、発刊から10年を経て、ようやく読むことができた。 90年代特有の香り 単行本の発刊は2000年であり、96〜98年…