雑感

1997年のきらめき

最近、久しぶりに原田知世さんの『ロマンス』という楽曲を聴いた。この作品は、1997年2月に発売されたアルバム『I could be free』から先行発売されたもので、発売直後から、よくラジオで流れていたのを覚えている。 当時私は16歳だったが、この曲が…

30年越しのマイアミ

『マイアミ午前5時』『セイシェルの夕日』...。1980年代初頭に、アイドルの松田聖子が発表した曲には、遠い国への憧れを抱かせるようなタイトルがついている。この曲を作るために、実際にマイアミやセイシェルに行く必要はない。写真や映画見た、異…

寂しい東南アジア

部屋の整理をしていたら、20歳前後のころ、東南アジアを旅したときに撮った写真が出てきた。懐かしいけど、どこか寂しい。 そのころは、バックパック旅行がブームで、東南アジアを旅する大学生が多かった。旅先として東南アジアを選ぶ理由を聞けば、「若いう…

首里の夜

今年の3月に三日間ほど、沖縄で過ごした。 今回は那覇の中心部ではなく、首里のペンションに宿をとった。 3月の那覇は既に気温が高く、夕方も上着を着ずに歩ける。宿から近い儀保、首里周辺を歩くと、夕方の街からは、海沿いの街特有の開放的な空気が感じら…

旅をすること、拡張現実を観ること

確かに、すでに「外部」は存在しないかもしれない。しかし、「外部」のオルタナティブが、「いま、ここ」の多重化だけであるとは言えないだろう。 たとえば旅をするとき、小さな公園や寺院が、あるいは都市の裏通りや地方の商店街が、ふしぎな価値を帯びて、…

ウジュンパンダンの夜

今年の冬に読んだ三島由紀夫氏の『アポロの杯』に、半世紀前のリオデジャネイロの様子を伝える、次のような文章があった。 「道は丘の頂きへ向って螺旋形にのぼってゆく。踊りの群はわずかずつそれを登ってゆくのでいつ果てるとも知れない。夜は暑かった。人…

ラジオの音と過ごした時間

日曜の朝にきまって聴いているラジオ番組がある。本日の放送内容はポルトガル特集であり、現地の音楽も何曲か紹介されていた。このような音楽を聴くことで、思うことがある。 高校時代に、いわゆる「ワールドミュージック」が好きだった。NHK-FMの夕方や深夜…

夜の雨、春のぬくもり

ベランダに出て煙草を吸う。 雨の中、春のぬくもりに包み込まれる。 もう冬の終わりではない。春の始まりの、空気のあたたかさ。 長いあいだ、春は好きになれなかった。分かりやすい性格の冬にくらべ、春のあいまいさは私を不安にさせた。 そのためか、春の…

冬の終わりの旅

昨夜の雨があがり、日ざしがまぶしい。もう冬も終わるのだろう。 毎年この季節になると、きまって沖縄にかよっていた時期があった。空港に降りたち、なま暖かい空気にふれる。その感覚が、わたしに春の訪れをつげていた。 昨年は、何年かぶりに沖縄行きをや…

『インドシナ』 レジス・ヴァルニエ

2009/3/12鑑賞(再鑑) 『トリコロール 青の愛』に続き、以前見た映画を再び見直してみました。9年ぶりの鑑賞です。やはり、9年前に見たときからの印象の違い、また自分が抱く思いの変化を強く感じます。 この映画を始めて観たときは、その前年に訪れたベ…

新しいオーディオを買う

新しいオーディオを買ったので、久しぶりに以前よく聞いていたCDを流してみました。 『菲賣品』というアルバムです。 このアルバムをよく聞いていたのが2003年、アルバム自体の発売は97年であり、収録されている曲目は90年代半ばのものが中心となっていま…

八重山諸島

数年前、はじめて島を訪れた時のことを思い返す。 旅に希望が持てなくなったあとの、しばらくぶりの旅だったと思う。なぜ旅に出ようと思ったのかは分からない。ただ、今ある日常をずらしてくれるのもが欲しかった。 島に渡ると、宿のマイクロバスが出迎えて…

冬の青空

今日の名古屋の空は、高く青く澄んでいる。光の粒子が見えそうなほど太陽が明るい。 冬のこのような空が好きだ。それは、澄みきった空気とともに、あるノスタルジーを思いおこさせる。 私が生まれ育った街は、冬になると雪におおわれるようなところだった。…

『ムーラン・ド・ラ・ガレット』

ルノワールの代表作に『ムーラン・ド・ラ・ガレット』がある。中学校の美術の教科書で見て以来、この絵は私のもっとも好きな絵であり続けた。そして、この絵に対する関心がなくなったとき、それは外国に対する憧れがなくなった時期でもあった。 思い出せば、…

中央フリーウェイ

『中央フリーウェイ』という曲とともに思いおこされる、高校時代の記憶がある。 当時の私は、朝六時頃に朝食をたべながら、情報番組をみる習慣があった。ちょうどその時間には、首都圏の交通情報が放送されており、荒井由実の『中央フリーウェイ』をBGMに…

秋のにおいとノスタルジア

今日の朝、外に出た瞬間、昨日までとはちがう肌寒い空気のなかに、秋のにおいを感じた。今年初めて感じる秋のにおいだった。このような日は同じにおいに包まれていた過去の記憶が、突然再生される。 あの日の夜、高層ホテルの最上階のレストランで彼女を見か…

90年代の都市論

以前日記で『攻殻機動隊』のことを書いたが、この映画の特徴として舞台背景となる「都市」が詳細な描写がある。そして、この描写で私はウォン・カーウァイ監督の『恋する惑星』や『天使の涙』を思い出した。どちらも現代のアジア的大都市が描かれているが、…

あこがれの系譜

あこがれの系譜とでも言うべきものを辿っていくと、高級ホテルや劇場、美術館といった場所に行き着く。それらの場所で感じられるものを、あえて表現するとなれば「幸せな幼少期の記憶」とでも呼ぶべきものであろうか。私が高級ホテルや美術館を好きな理由は…

ボロブドゥールの星空

数年前、インドネシアのジョグジャカルタで連休を過ごしたことがあった。その滞在中、近郊にある遺跡、ボロブドゥールで過ごした2日間が忘れられない。遺跡ももちろん魅力的であったのだが、それとともに私の心の中にあるものは、遺跡を取り囲む村々、そして…