『エセー』 モンテーニュ

2011/7/16読了
・暇は、いつだって精神を移り気にする。心は無秩序にあばれまわり、たくさんの風変わりなまぼろしや化け物を生み出すことになる。
・自分だけで精神をぐったり、働かせるより、偶然により、ふとした機会や、人々といっしょにいる場合とかに、精神からより多くのものを引き出せる。
・財産を失ったり、隷従させられる恐怖に責められることが、死よりもはるかにやっかいで、がまんできないものである。
・奇抜な、特別な衣服は、野心的な愚かしさや妙な色気から発している。賢い人間は、魂を群衆から自分の内側へ引き戻し、ものごとを自由に判断できる状態にしておくべきであり、外部のことは社会通念のスタイルや形式に従わなくてはならない。
・公共のもので、なかなかに動かしがたい制度や規則を、個人的な考え方に従属させるのは、正当を欠く。個人の理性の権限は、その個人にしか及ばない。
・軍事作戦やその他の多くの技術においても、運命が大きな役割を演じている。そのため、結論が引き出せずに途方に暮れてしまうときに、もっとも確実なのは、名誉と正義が多い側を選ぶことであり、どちらが近道か見当がつかないときは、まっすぐな道を選ぶことだ。
・書物の知識のみに頼ることは、他人の腕にすがり、それに引きずられて、自分をダメにすることだ。きちんとした訓練を受けていれば、セネカキケロから知識を拝借せずとも、自分自身の中から取ってくることができる。
・知能を獲得したら、浪費せず、節約することだ。世間を見下したような無礼な態度は避けるべきだし、自分は人と違って優秀なんだと見せたがる子供じみた野心も禁物だ。批判したり目新しいことをいって、特別な評判を獲得しようと考えてもいけない。慣習を超越する特権は、偉大にして、高名な魂にしか許されていない。
・われわれが人生の領分を、正当で自然な範囲に制限するならば、学問の大部分は無用な広がりや、深みがある。勉学という川の流れは、有用性の欠けるところでせき止めてしまったほうがよい。
・徳の価値は、実行が容易で、役に立ち、歓びであることにある。その手段は、努力でなく、規律あるふるまいである。徳は人間の快楽をはぐくむものであり、その快楽を正しいものとすること、息切れすることのない、味わいのあるものとするべきである。

エセー〈1〉

エセー〈1〉