人文科学

現代思想入門/仲正昌樹 他

2007/12/30-2008/2/10 「フランクフルト学派」「ポスト構造主義」「現代リベラリズム」「カルチュラル・スタディーズ/ポストコロニアリズム」を主な思想家の学説とともに概説。 今後も思想関係の本を読む際に、辞書的に活用したい。

集中講義!日本の現代思想/仲正昌樹

2008/1/28-2/3 日本における現代思想の展開を戦後のマルクス主義の展開から、ポストモダン思想の受容、その後の現在の状況まで時系列的に追っていく。それぞれの時代の思想については、その都度該当箇所を参考にしたいが、最後に「現代思想」に対する著者の…

東京から考える/東浩紀・北田暁大

2007/12/29-1/2 二〇〇七年初頭にベストセラーとなった、二人の若手思想化が「東京」について述べた本。 二人の立場の違いとして、たとえば街の郊外化・無個性化に対し、東はヴァーチャルな空間で個性が保たれる以上、そもそも都市に個性が必要なのか、と疑…

歴史と反復/柄谷行人

2007/11/24-12/28 近代日本の言説空間 前半では近現代の歴史に見られる「反復」を、コンドラチェフの波を根拠としながら論じる。 たとえば天皇をめぐる言説空間については、大正時代と七〇年代に共通性を見出している。大正時代は「土人の酋長」論(柳田國男…

嗤う日本の「ナショナリズム」/北田暁大

2007/12/5-12/22 1960年代以降の日本社会を、「反省」の系譜に沿って、現代の「ナショナリズム」の源泉を分析している。 筆者は、現代を「ロマン主義的シニシスト」の時代であるとしている。その行為の動機は「不確実な他者への接続可能性」であるとし、…

トリマルキオの饗宴/青柳正規

2007/10/28-11/23 ローマ時代の小説『サテュリコン』中の有名な場面である『トリマルキオの饗宴』の模様を、当時の資料を駆使し詳しく解説した一冊。当時の饗宴の役割や、出された食事、またトリマルキオが属した解放奴隷という身分など、社会史的な記述が多…

天使の王国/浅羽通明

2007/11/3-11/10 天使としてのおたく 「学校社会による汎正解化によって、「おたく」は世界の傍観者と化した。彼の眼からはすべてが俯瞰されるが、彼自身はすでに世界の中にはいない。そう『ベルリン・天使の詩』の天使たちのように。「おたく」は「おたく」…

ウェブ社会の思想/鈴木謙介

2007/10/21-10/30 手に届きそうな未来 「『シガテラ』が描こうとしている未来とは、カーニヴァルによってテンションを高めて、未来へ向けて驀進することでも、そうしたカーニヴァルによって未来を選ぶことを諦めてしまうことでもなく、「手の届きそうな未来…

カント『純粋理性批判』入門/黒崎政男

2007/10/7-10/30 時間とは?空間とは? 「分かりやすく言えば、時間・空間は、ものそのものが成立するための条件ではなくて、ものについての人間の認識が成立するための条件である。つまり、時間・空間はものの側にあるのではなくて、認識する側にある存在で…

世界は村上春樹をどう読むか

2007/9/22-10/8 村上春樹が語る成功の理由 「不思議なことに、かつ素晴らしいことに――そしてここにこそ村上春樹の小説の驚異的な文学的成功の秘密がひそんでいるように思えます――村上の登場人物たちは、かつて確かだったものたちが崩壊していくことに、はじ…

自由を考える/東浩紀・大澤真幸

2007/9/24-10/7 「偶有性」と「共感」 大澤「偶有性というのは、他でもありうる、ということです。様相の論理を使えば、偶有性は、不可能性と必然性の否定です。つまり、可能だけれども必然ではないことが、偶有的なわけです。たとえば、今、皆さんは、ここ…

ネーションと美学/柄谷行人

2007/9/2-9/23 超自我の強化としてのワイマール体制 「ワイマール体制は、前期フロイト的な観点から見れば、連合軍=戦勝国たちが、敗戦国ドイツに課した抑圧を内面化した装置だということになるだろう。ドイツ民族を去勢したのは連合軍であり、その背後にユ…

情報自由論/東浩紀

2007/8/18-8/27 環境管理型権力とアーキテクチャ 「(キセル乗車への対策について)自動改札機の導入はこれらの問題を解決する切り札である。自動改札機が導入された改札口では、キセルを試みようとしてもその可能性がない。(中略)しかもその規制は、切符…

影の現象学/河合隼雄

2007/8/11-8/26 影の反逆 「このような集団(投影が規制され影を自覚することが難しくなった集団)が強力であることはもちろんである。しかし、どのような強いものも何らかの弱点をそなえている。このような集団は、あるときに強烈な影の反逆を受け、それに…

ハンナ・アーレント入門/杉浦敏子

2007/7/29-/8/10 アーレントの思想を『人間の条件』を中心に解説。 判断力 「判断力とは、共有される公共的空間を保持するための共同的な理性的能力であり、公的生活、公的幸福について判断を下す能力なのである。人々がこの共同世界、公的世界の在り方に無…

コンテンツの思想/東浩紀

2007/7/23-7/29 『ノルウェイの森』の意義 「『世界の終わり』は、まさにこの『ノルウェイの森』を準備した作品だと思います。あれは、要するに、僕は脳内世界でオッケーだから現実には戻りません、という話ですからね。 その態度は新海さんの映像の走馬燈的…

ゲーム的リアリズムの誕生/東浩紀

2007/7/9-7/22 ライトノベルの本質 「ライトノベルの作家と読者は、戦後日本のマンガやアニメが育てあげてきた想像力の環境を前提としているために、特定のキャラクターの外見的な特徴(さきほどの引用箇所では「眼鏡」「小柄」といった表現)がどのような性…

『パサージュ論』熟読玩味/鹿島茂

2007/6/3-6/16 難解なベンヤミンの『パサージュ論』を解説した本。著者によれば、ベンヤミンが『パサージュ論』において試みた歴史学とは「集団の夢」が出現する瞬間を捉えることである。そしてこの集団の夢とは、アルカイックなものの記憶やノスタルジーを…

生き延びるためのラカン/斎藤環

2007/5/26-6/2 ラカンにおける「言葉」 ラカン理論の基礎概念をわかりやすく紹介した本。さまざまな理論を紹介する中でも、著者は特にラカン理論における「言葉」の重要性を強調している。 「この本は、言葉と心の関係についての話からはじまった。つまり、…

ユング心理学入門/河合隼雄

2007/4/28-5/17 ・タイプについて 「ユングも指摘しているように、実際には、自分の反対の方の人を恋人や友人に選ぶ傾向も強いのである。これを簡単に述べると、自分と同型のひとに対しては深い理解を、反対方のひとに対しては効しがたい魅力を感じて結ばれ…

『ヴィーナスの誕生』視覚文化への招待/岡田温司

2007/4/15-4/24 「ウィントとパノフスキーの解釈は、いわゆる「双子のヴィーナス」にまつわる新プラトン主義の理論にかかわるもので、ボッティチェッリの二枚のヴィーナスをこの理論に結びつけるという点で、基本的に一致しています。プラトンにさかのぼり、…

隠喩としての建築/柄谷行人

2007/2/11-2/17 「数学者にとって、ゲーデルの証明は、モリス・クラインがいうように絶望的なものだろうか。実際の数学の発展は、数学の基礎などに関知しない“応用数学者”によってなされており、また数学の発展は、実はむしろ“非合理的”になされてきたのであ…

一九〇〇年頃のベルリンの幼年時代/ベンヤミン

2007/2/3-2/9 「私が自宅のロッジアで出会う午前は、すでにずっと以前から午前だったので、ほかのどこで出会う午前よりも、もっと午前そのものであるように思われた。私がここで午前が来るのを待つということは、決してありえなかった。常に午前のほうが、す…

新南島風土記/新川明

2007/2/3読了 「多くの旅行者が竹富島を訪れて、初めにかいたような石垣や家並みや、石庭を言葉をきわめてほめると、島の人たちは「どうしてこの島がこんなに美しく見えるのでしょうか」と純朴な顔に面映そうな微笑をうかべて反問してくるのにぶつかるが、島…

新文学入門/大橋洋一

2007/1/26読了 (近代的作者の誕生について)「それまでの中世の作者というのは、自らの外に現前する権威を拠り所とし、過去の、既存の権威というものと密接な関係にあったのですが、近代的作者は、自らの内に蓄積された経験を権威として、未来の可能性ある…

『悪霊』神になりたかった男/亀山郁夫

2006/1/14読了 (9・11の同時多発テロを「芸術的」と評した音楽家に対して)「では、音楽家は、みずからの内面にきざしている「狂気」に、あえて言いましょう、スタヴローキン的な狂気、スタヴローキン的なニヒリズムの存在に気づいてはいなかったのでし…

文学とは何か/イーグルトン

2007/1/14読了 「外的世界に汚されることなく、何も意味することのない独り言という考え方は、現象学そのものに実にぴったりのイメージである。人間の営為と経験からなる「生活世界」を、伝統的な哲学の残酷な束縛から解き放つのだというその主張にもかかわ…

復興期の精神/花田清輝

2006/12/2読了 「率直にいえば、私はコペルニクスの抑制を、彼の満々たる闘志のあらわれだと思うのだ。かれのおとなしさは、いわば筋金いりのおとなしさであり、そのおだやかな外貌は、氷のようにつめたい激情を、うちに潜めていたと思うのだ。そうして、闘…

ものぐさ精神分析/岸田透

2006/11/11読了 「和魂洋才とは外面と内面とを使いわけるということである。(中略)ある危機的状況にあって、外面と内面との使いわけというこの防衛機能を用いることが、精神の分裂をもたらすのである。」(19) 「人格の統一性の裏づけを欠いた精神分裂病的な…