集中講義!日本の現代思想/仲正昌樹

2008/1/28-2/3
日本における現代思想の展開を戦後のマルクス主義の展開から、ポストモダン思想の受容、その後の現在の状況まで時系列的に追っていく。それぞれの時代の思想については、その都度該当箇所を参考にしたいが、最後に「現代思想」に対する著者の考えが述べられている。
「「常識」とされているものを捻って見るためのヒントになるような、事物を細かく切り分けていくための“若干の分析装置”を提供できれば、上等ではないかと思う。それさえ、本当のところけっこう難しい。「左展開」した人たちの一部――特に反グローバリゼーション派――が再び象徴としてかつぎ上げようとしているマルクスは、素朴に「労働価値説」の有効性を信じていたわけではない。貨幣経済の浸透に伴って、「労働価値説」が通用しそうな世界、“生き生きとした自然”とつながった共同体が「幻影」として消え去っていくのではないかという危機意識、の中で「書いた」のである。それは“生き生きとした自然”とのつながりを失った“我々”が、人間としての「主体性」をも喪失して、徐々に家畜化していくのではないか、という危機意識でもある。マルクスを復活させたいのであれば、『共産党宣言』などの文面に現れた、彼の表面的な勇ましさだけをいたずらに模倣するのではなく、自分自身のそれを含めて、あらゆる常識を疑わざるを得なかった、深い懐疑のまなざしを学ぶべきだろう。それこそが、マルクスをリサイクルすることである。」(245)