トリマルキオの饗宴/青柳正規

2007/10/28-11/23
ローマ時代の小説『サテュリコン』中の有名な場面である『トリマルキオの饗宴』の模様を、当時の資料を駆使し詳しく解説した一冊。当時の饗宴の役割や、出された食事、またトリマルキオが属した解放奴隷という身分など、社会史的な記述が多く、面白く読めた。
贅を尽くした食事を出し、トリマルキオの成金ぶりを描く一方で、一文無しの解放奴隷を登場させるなど、彼らの刹那的な運命も示唆している。彼は神話や歴史への無知をさらけ出す一方で、人生経験に基づいたするどい洞察力を持つ人物として書かれている。そのトリマルキオを通し、当時の皇帝ネロを暗に批判する言説をさせているなど、興味深い記述もある。