推手/アン・リー

2008/5/13
ニューヨークの息子夫婦の家に越してきた老人が、家を出て自分の居場所を見つけるまでを描く。
『恋人たちの食卓』と同様、家族と世代間の葛藤をテーマに描いている。この映画ではそれに加え、アメリカに暮らす中国人社会の様子も垣間見ることができる。個人主義アメリカと家族主義の中国、その狭間で彼らが手に入れるべきものとあきらめるべきもの、そのひとつの回答がこの映画には出ている。
単純な家族愛礼賛に終わらない結末が、ほのぼのとした中にも深さを感じさせてくれた。
「北京は変わってしまった、昔のぬくもりが消えて。でも故郷を出て40年、私の記憶が間違いなのかも。ともかく、昔と今が結びつかなくて...」

余談だが、この映画の日本語字幕は素晴らしかった。深沢三子さんという方が担当されているが、老人達の語る言葉の彫りの深さが非常によく表現されていた。この映画から受けた感動の少なくない部分は、深沢氏の日本語訳によるものだと思う。