『クラッシュ』 ポール・ハギス

2009/3/4鑑賞
衝突し合う者たちの和解は、古典的なストーリーの枠組みだと思います。しかし、その古典的な枠組みを、人種も階級も異なる十数人もの人々に演じさせたらどうなるか、それを描いたのがこの映画になります。
まず、演出面の素晴らしさに驚かされました。多数の登場人物すべてに個性が与えられ、彼らの演じるプロットをつなぐ場面転換もスピード感があり、見ていて飽きません。その演出の中に、アメリカに内在する人種問題がきわめて分かりやすく織り込まれています。このような「見せる」演出の面白さが、素人目からも見て取ることができるのです。
また、映画のストーリーはさまざまな人種が生活するロサンゼルスが舞台だからこそ描けたものでしょう。そして、見終わった後に少しだけ幸せな気分になることも含め、非常にアメリカ的な印象を受けました。
アメリカの社会に根差す問題を扱いながらも、斬新な演出手法を見せてくれるこの映画は、「次世代感」まで感じさせてくれる、刺激的な作品だったと思います。

クラッシュ [DVD]

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