『不思議の国のアリス』 英国ロイヤル・バレエ

2012/6/23鑑賞
ローレン・カスバートソン、セルゲイ・ポルーニン
英国ロイヤル・バレエ16年ぶりの新作として、2011年2月に初演された作品。
作品の楽しさはもちろんのこと、その演出の随所に「いまの芸術作品」を感じさせる、素晴らしい舞台でした。
2000年以降の、高い評価を得ている作品を見ると、例えば『ダークナイト』や『1Q84』のように、高度な内容を分かりやすいフォーマットで表現したものが多いことを感じます。この『不思議の国のアリス』もその系譜につながるものと言えるでしょう。
モダンダンスやミュージカルの要素を取り入れた振り付け、鮮やかな色づかいのかわいらしい衣装など、他のジャンルの優れた部分も積極的に取り入れています。
そして何よりも楽しさ、親しみやすさ。バレエの「決まりごと」のような独特の振り付けは見られず、初めてバレエを鑑賞した方でも、純粋に内容を楽しめるのではないでしょうか。
ラストでは、ジャックはTシャツとジーンズ姿の現代の青年として描かれます。
バレエという芸術ジャンルの外に向かって開かれているこの親しみやすさは、ジャンルを純化したような20世紀の作品にはない、とても現代的なものだと思います。
文字どおり、鑑賞する人を選ばず、万人に開かれている『不思議の国のアリス』は、これからも上演回数を増やし続けるでしょう。さらに、作品が伝統ある英国ロイヤル・バレエで作られたという事実は、舞台芸術としてのバレエの復権につながる可能性をも秘めていることだと思います。