タクシードライバー/スコセッシ

2007/8/2-3
夜のニューヨークを舞台に、一人のタクシードライバーの(非)日常を描いた作品。
冒頭、世間に対する愚痴を言いながら、主人公は夜の街をタクシーで流す。サム・テイラー風の音楽がBGMとして流れるが、まずこの場面の気持ちよさに魅せられた。
同業のドライバーたちが集まる安食堂での何気ない会話も面白い。小男やオカマを話のネタにしているが、彼らにはどこかあきらめが漂っている。
最後、主人公は少女売春の元締めを撃ち殺す、という「英雄的行為」を行うが、生活は何ひとつ変らない日常のまま。ラストでも、主人公は冒頭と同じくニューヨークの夜を流している。
主人公の孤独や、英雄が生まれない世界に、現代を生きることの圧倒的なリアリティを感じた。
「聞きたいことがある。今、アメリカが最も頭を痛めている問題は?」
「このゴミ捨て場みたいな町を掃除して貰いたいね。悪で一杯です。がまん出来ませんよ。大統領になる人は、きれいにすべきだ。町に出ると頭が痛くなる。いつまでも痛むんです。大統領なら――水洗便所みたいに流せるはずです」(0:31)
「どこにいても、俺には淋しさがつきまとう。バーや車、歩道や店の中でもだ。逃げ場はない。俺は孤独だ。」(0:55)