寂しい東南アジア

 部屋の整理をしていたら、20歳前後のころ、東南アジアを旅したときに撮った写真が出てきた。懐かしいけど、どこか寂しい。
 そのころは、バックパック旅行がブームで、東南アジアを旅する大学生が多かった。旅先として東南アジアを選ぶ理由を聞けば、「若いうちにしか行けない」「ヨーロッパは年を取ってからでも行ける」という言葉が返ってきた。私はその言葉に、安易に賛同したくはなかった。
 あれから15年ほどが経ったが、今でも東南アジアは気軽に行くことができる。若いうちにしか行けないほど、過酷な旅行をしなければならない場所ではない。ただし、19歳の時に感じたような刺激を受けることは、まずできない。つまり「若いうちにしか行けない」わけではない。同じような旅をしても、「若いうちにしか味わえない」感情があるということなのだ。
 過去の写真を見てわき上がる寂しさとは、そのようなものだ。今は、当時できなかったものの見方をすることができるとある程度自信をもって言えるし、旅の味わい方にも余裕が出てきている。それは自分が成長したことでもあるのだが、そのことが寂しさを置き換えられないところがつらい。