1997年のきらめき

 最近、久しぶりに原田知世さんの『ロマンス』という楽曲を聴いた。この作品は、1997年2月に発売されたアルバム『I could be free』から先行発売されたもので、発売直後から、よくラジオで流れていたのを覚えている。
 当時私は16歳だったが、この曲が出たころ、自分のまわりのいろいろなものが少しづつ軌道に乗り、将来へのほのかな希望が見えはじめてきたころだった。まだ住んだことのない遠い街や、外国に行くことにも、具体的なイメージが持てるようになってきていた。そのような当時の気分に、この曲のもつさわやかな高揚感は、よく似合っていた。18年たった今でも、イントロを聴けば、そのころの風景や匂いを思い出すことができるのだ。
 ただ、いまこの曲を聴くと、なつかしさと同時に、後悔という感情がうかぶ。その後悔とは、あのころ持っていたほのかな高揚感を、そのまま持ちつづけることができなかったことだ。生活しているなかで、将来に希望が持てたり、高揚感を持てる時期はそれほど多くない。しかし、そのような感情も、期待通りにすすまないことが多かったり、日常でつまらないことがつづけば、そのうち消えてしまう。それが消えるまえに、小さくなった状態でもいいから、その感情を心のどこかに持ちつづけていたかった。そのようにできるほど、十代のころは意思が強くなかったし、器用でもなかった。
 希望だったり、憧れだったり、そういう想いを持っていれば、もう少し自分のことを大事にできたのかもしれない。丁寧に生きてみたいな、と思うのだ。

I could be free

I could be free