滞欧日記/澁澤龍彦

2006/12/23読了
「スペインへ来て気がついたこと。方輪者、めくら、足なえ、いざり等多し。道ばたに立っている。新聞売り。
 乞食。押売り。客引き」(81)
「たしかにヴェニスは、安ピカ物の古びた、大時代的な感じの町である。骨董屋多し。何軒か、ひやかして歩く。
 かびが生えそうな、じめじめした石の町。
 水が石の階段に、ひたひたと寄せている。
 ポーターばかりでなく、手押し車が唯一の運搬具である。車が全くいない町。」(118)
パレルモ着。空港の騒がしい混乱の様子はバグダッドのそれを思わせる。」(176)
「夜は近所のレストランへ出かける。小降りの雨。
 バルセロナの町は、スペインの或る一面をきわめて尖鋭に反映しているようなところがあり、意外に気に入る。色で言えば黒の感じ。マドリッドの赤あるいは金に対して。
 道路の道はば広く、古い建物がつらなっている。」(200)