音楽

ルイサダのショパン(17のワルツ)

典型的なサロン音楽作品であるショパンのワルツ。それほど技巧的ではなく、また耳なじみの作品が多いせいか、ワルツ集を聞くと幼少時のピアノの発表会の映像が浮かぶ。それはそれで、ノルタルジーに浸れる心地よい時間を過ごせるのであるが、それだけでは少…

ルービンシュタインのショパン(マズルカ集)

ほかの作曲家の作品同様、ショパンの音楽を聴くときにも、私は吉田秀和氏の評論を手元に置いている。 だが、マズルカ集では、本当に吉田氏の文章にたよりきってしまった。 「私は、《マズルカ》が好きなのである。」とずばり書いているだけあって、非常にク…

エッシェンバッハのショパン(前奏曲集)

以前NHK-BSの番組において、池辺晋一郎氏がシューマンとショパンという、ロマン派の代表的な作曲家のピアノ曲を比較し、次のようにいっていた。 シューマンはピアノの奏法を探求することによって独自性を獲得し、一方ショパンは書法の完璧さを目指した…

アルゲリッチのシューマン

呪術士としてのアルゲリッチ。彼女の奏でるシューマンを表現するとすれば、この比喩が最も腑におちます。 私が聴いたのは、次の楽曲。 『幻想曲 ハ長調』 『幻想小曲集』 『ピアノ協奏曲 イ短調』(新日本フィルとの共演) たとえば幻想小曲集。一曲目の『夕…

バーンスタインのシューマン

バーンスタインのシューマン全集。 3月くらいから聴いていて、もうだいぶ聴きこんだかな、という感じがします。 他の指揮者による演奏をそれほど聴いているわけではないため、比較はできませんが、収録された4曲から感じる印象は、いずれも「正統的」という…

『シューマン:交響曲第2番』 シノーポリ

ここしばらく聴いているシューマンの交響曲も、だいぶ耳になじんできました。ベートーベンなどと違い、演奏される機会が少ないせいか、聴きはじめはとっつきにくい部分がありました。ただ、曲を表題音楽や「苦悩から勝利へ」などの物語を表現したものととら…

ホロヴィッツのシューマン

3月あたりから、クラシックはシューマンばかりを聴いています。 この数日聴いていたのは、ホロヴィッツの60年代の録音を集めたCD。『子供の情景』『クライスレリアーナ』『アラベスク』『花の曲』などが入っています。シューマン:子供の情景/クライスレリア…

『シューベルト:ザ・グレート』 ベーム

偉大な交響曲 ザ・グレート。世に出回るその通称が示す通り、歴史的に見ても極めて偉大な芸術作品であることは間違いない。しかし、私が数年前にこの作品を聴いたとき、その迫力は感じることができたが、「グレート」というタイトルやその評価から得られるよ…

『ベートーヴェン:ピアノソナタ第1番』 ヴェデルニコフ

ここ1年ほど、クラシック音楽はほとんどベートーヴェンばかりを聴いてきた。 当初は交響曲を全曲聴く計画だったが、同時代のピアノソナタ、弦楽四重奏も聴きだしたため、晩年の作品を聴き終えるまで、結果的に1年もかかってしまった。 このように、1年をかけ…

『バッハ:ロ短調ミサ曲』 リヒター、ミュンヘン・バッハ管弦楽団

3月11日を迎えるにあたり、この作品を聴き、復興を祈りたいと思った。 全体は4つの分冊から成っている。 3分冊目までのグロリア、ニケア、サンクトゥスは、キリストの栄光や父なる神を讃える内容である。しかし、ここで奏でられる高らかな勝利の音楽は、大き…

『チャイコフスキー:交響曲第4番、5番、6番』 ムラヴィンスキー、レニングラード管弦楽団

チャイコフスキー後期の交響曲を集めた作品集。その音楽には、ドイツ系の作曲家からは感じられることの少ない物語性の強さ、感情の横溢、そして親しみやすさがある。 作曲家は、その音楽についてのいくつかの文章を残している。 「たしかに作曲者が書いてい…

『ラヴェル:ピアノ作品集』 ロジェ

2001年の7月に、渋谷のタワーレコードでこのアルバムを買ってから、もう10年がたつ。当時ラヴェルといえば、『ボレロ』の作曲者や『展覧会の絵』の編曲者としてしか知らず、なぜピアノ曲集を買ったかといえば、ショパンのピアノ作品集を集めていた、その流れ…

『ブラームス:ヴァイオリン協奏曲』 オイストラフ、クリーヴランド管弦楽団

「この音楽には、ベートーヴェンにはなかった一種の郷愁の味わいがある。一抹の憂いを帯びた味わいがある。それは、このあとになってもぬけない。いや、それどころか、あんなにおちついた、のびのびとした拡がりのように思われたものが、いつのまにか省察と…

『ドビュッシー:前奏曲集』 ベロフ

ドビュッシー晩年のピアノ作品集である。かつて「亜麻色の髪の乙女」など有名な幾曲かを聴いたことはあったが、改めて全曲を聴くことでまた異なった印象となった。 何よりも強く感じることは、曲による表現技法の幅広さである。増5度や9度の音を多用した和声…

『ハイドン:弦楽四重奏曲 作品64-5』 スメタナ四重奏団

まさに古典派、まさに中庸。完璧な構成の中に育ちの良さを感じさせるこの作品には、仰々しい感情の動きは存在せず、どこまでの明るく、軽やかだ。 「そのかわり、感傷はない。べとついたり、しめっぽい述懐はない。自分の悲しみに自分から溺れていったり、そ…

『THE CHET BAKER QUARTET WITH RUSS FREEMAN』 

ウエストコースト・ジャズを代表するひとりである、チェット・ベイカーのこのアルバムは、いわゆる超絶技巧や作曲の斬新さを見せつける作品ではない。むしろ純粋にスイングに身をゆだねられる心地よさをもっており、晩春や初夏のような季節には何度でも聴き…

『シューベルト:ピアノ・ソナタ第14番』 内田光子

シューベルトはロマン派の嚆矢といわれる作曲家である。このピアノ・ソナタを聴けばその理由が分かる。古典派の均整のなかから、ロマン派的な感情の揺らぎが生まれる過程が見て取れるだろう。 第一楽章、最初の主題は短調で始まる。しっかりと構成された古典…

『ひこうき雲』 松任谷由実

震災の後何度も、ラジオからこの曲が流れていた。その当時の空気、気分と一致するところがあり、2011年の春に初めて、松任谷由実の作品を購入することとなった。 作品全体は、都会的で内省的な印象がある。アレンジはやや時代がかったものがあるが、それでも…