『バッハ:ロ短調ミサ曲』 リヒター、ミュンヘン・バッハ管弦楽団

3月11日を迎えるにあたり、この作品を聴き、復興を祈りたいと思った。
全体は4つの分冊から成っている。
3分冊目までのグロリア、ニケア、サンクトゥスは、キリストの栄光や父なる神を讃える内容である。しかし、ここで奏でられる高らかな勝利の音楽は、大きな悲劇を前にし、よそよそしく聴こえもする。
最終分冊のアニュス・デイはやや趣が異なる。これは、勝利ではなく、やわらかな平安への願いを奏でる音楽である。そして、より現代の気分にうったえるものはこちらの方である。
敗者や救われない他者を生みだしうる勝利よりも、全体をやさしく包みこむ、あわい光のような平安への願い。
「平和はすでに実現しており、信仰によって心の平穏をかちえた人の祈りである。」(『私の好きな曲』吉田秀和
バッハに普遍性があるとすれば、平和へのこの思いであろう。被災地が平安であることを祈り続けることが、私たちには必要なのだ。

バッハ:ミサ曲 ロ短調

バッハ:ミサ曲 ロ短調

  • アーティスト: リヒター(カール),ブッケル(ウルズラ),ヘフゲン(マルガ),シュラム(エルンスト=ゲロルト),ヘフリガー(エルンスト),ミュンヘン・バッハ合唱団,バッハ,ミュンヘン・バッハ管弦楽団,ディーンシュトビア(ピーター),バウマン(ヘルマン)
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1996/08/01
  • メディア: CD
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