『グリーンバーグ批評選集』 4/4

現代における絵画の質とは

 絵画芸術にとって削減しえないものとは、ただ二つ、平面性とその平面性の限界づけである。言い換えれば、これら発った二つの基準に従えば、絵画として経験され得る物体を創造するには充分なのだ。
 今、芸術において価値もしくは質の究極の源泉と言えるものは、技量でも訓練でもなく、唯一、構想(創案、インスピレーション、直観とも呼ばれ得る)だけである。技量つまり器用さは、今ではもはや質を生み出せない。それらは余りにも一般化し、余りにも得やすく、また余りにも類型化してきたからである。(159-160)

マティス

 おそらく彼の芸術に美辞麗句(レトリック)を弄する人々は、立ち去るよう警告され続けてきたのかもしれない。彼の芸術はそれ以外の説明を要しない――ということであるならば、このことは実に、良い芸術、悪い芸術の別なくあらゆる芸術について言えるのだが。
 マティスの芸術は、その「技巧」や「形式」を通して、「形式」が明白にする感情を通して雄弁に語っている(あらゆる良き絵画や彫刻は、ある程度そうである)。しかし、マティスは言葉の修辞(レトリック)を拒絶したように、芸術でも図解的な修辞のいかなる痕跡をも遠ざけた。彼は我々の伝統において、真に徹底的な方法でそれを成し遂げた最初の画家と言えよう。もっともこれが彼の芸術をジョット、カラヴァッジョ、ゴヤダヴィッドのそれより優れたものにしているのではない、必ずしもそうではない。だがそれは、どんなミディアムであろうとも本音を吐くのが難しいと思っている全ての人々にとって、まさに有益な範例になっているのである。(225-226)

グリーンバーグ批評選集

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