ボロブドゥールの星空

数年前、インドネシアジョグジャカルタで連休を過ごしたことがあった。その滞在中、近郊にある遺跡、ボロブドゥールで過ごした2日間が忘れられない。遺跡ももちろん魅力的であったのだが、それとともに私の心の中にあるものは、遺跡を取り囲む村々、そして夜の星空であった。
ボロブドゥールでは、遺跡見物というお決まりの観光を終えたあと、ホテルでレンタサイクルを借り、近くの村を訪ねに行った。そこでは、文字通りの南国の田園風景が見られる。裏道に入れば、昔ながらの服に身をつつみ子供をあやす女たち、素足であそぶ浅黒い肌の子供たちがいる。そして、そこにある熱帯の自然。背の高いやしの木が生い茂り、遠くに目をやれば、明るい緑の森は湿気のために霞みがかっている。
その夜ホテルで夕食を食べたあと、遺跡公園内をしばし歩く。大きな町がなく明かりが少ないためか、星が本当によく見える。緯度が違うため、日本で見る星空とはまた違っている。そのことが、私に遠くに来たことを思い出させた。
星々の間を縫うように、小さな星屑の集まりがある。それが天の川だということがわかるまで、しばらく時間がかかった。
ジョグジャカルタに帰ってから、私は急に手紙を書きたくなった。久しぶりに海外に来たこと、そこで感じたことを誰かに伝えたくなったのだ。旅の最後の日、夕方の飛行機を待つまでの間、ホテルでかつての友人に手紙を書く。そのような感傷的な時間を過ごすことを、もう何年もしていなかったということに、その時改めて気づかされた。