冬の終わりの旅

昨夜の雨があがり、日ざしがまぶしい。もう冬も終わるのだろう。
毎年この季節になると、きまって沖縄にかよっていた時期があった。空港に降りたち、なま暖かい空気にふれる。その感覚が、わたしに春の訪れをつげていた。
昨年は、何年かぶりに沖縄行きをやめた。かわりといっては何だが、東京で一晩を過ごした。夜東京に到着し、お茶の水のホテルの食堂で、パスタとガーリックトーストの軽い夕食をすませる。思いあって、夜のまちを歩いてみようと思った。
ホテルから、ひたすら東の方向に歩をすすめる。ビルが建ちならぶ無機的な街のなかに、一軒家や公園が顔をのぞかせる。
大都会にもかかわらず、人はすくない。しかし冷たさは感じない。人のいとなみが見られるわけでもないのに、どこかあたたかい。
その心地よい空気につつまれながら、おだやかな、優しい春の訪れを感じていた。