ラジオの音と過ごした時間

日曜の朝にきまって聴いているラジオ番組がある。本日の放送内容はポルトガル特集であり、現地の音楽も何曲か紹介されていた。このような音楽を聴くことで、思うことがある。
高校時代に、いわゆる「ワールドミュージック」が好きだった。NHK-FMの夕方や深夜に放送される、それらの音楽を好んで聴いていた記憶がある。特に深夜の放送では、たとえ放送される音楽が同時代のものではないとしても、空想の中でイタリアやポルトガルやブラジルを思い描くという、贅沢な時間を過ごしていたと思う。今思えば、音楽そのものよりはそのような時間を過ごすことが好きだったのだ。
その後、様々な場所に旅に出たり、知識を得たりするごとに、かつてのような、経験が貧しかったからこそ可能であった幸せな時間は、過ごすことができなくなってしまった。それに代わる、新たな幸福を感じることはできるわけだが、過去のその瞬間の記憶を、色あせずにとどめておきたいという欲求はなお強くある。
最近、文章を書きたいと思うことが多い。そして、文章により記憶を反芻することは、過去の記憶を組み立てなおす、ひとつの方法であるとも思う。